「ミンディッチ」事件の全貌:ウクライナの汚職事件を解説する

11月29日夕刻に公開される「知られざる地政学」連載(118)としてすでに書き上げていた原稿がある。しかし、28項目の和平提案が明らかになったことから、急遽、こちらについて連載で考察することにした。

そこで、もったいないので、公開予定だった拙稿をそのままここにアップロードすることにした。その内容は、19日に「現代ビジネス」に公表した拙稿「ついに暴かれたウクライナ政界の腐敗「一番真っ黒なのはゼレンスキー」」をより詳しくしたものである。

読んでもらえばわかるが、日本語で読める資料として、今回の汚職劇についてこれほど詳述したものはない。一知半解で、つまらぬ駄弁を吐く似非専門家とは違う、本当の専門家として書いたものだから、熟読玩味してほしい。

なお、28項目提案をめぐる考察については、「現代ビジネス」においても27日以降に掲載予定である。

 

 

*写真などについては、面倒なので、転写されない。

「知られざる地政学」連載(118

なぜウクライナ支援を継続するのか?:真っ黒なゼレンスキー政権を糾弾せよ!

 

塩原俊彦

国際

#ミンディッチ #金の便器 #NABU #コロモイスキー #ミダス #腐敗 #汚職 #真っ黒なゼレンスキー

 

 

今回は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領およびその周辺が腐敗している問題について改めて論じる。すでに、拙著『ウクライナ3.0』、『ウクライナ戦争をどうみるか』などで何度も論じてきた問題だが、2025年11月になって、「ゼレンスキーの財布」と呼ばれる人物などへの家宅捜査や逮捕が行われたことで、ゼレンスキーを取り巻く腐敗構造がより明確になりつつある。すでに、二人の大臣が辞任し、ゼレンスキー政権の腐敗ぶりが露わになっている。そこで、「真っ黒なゼレンスキー政権」の内部について解説し、日本国民の税金をウクライナ支援に用いることの不実さを問題提起したい。

オールドメディアがゼレンスキー批判を展開しないことで、日本の国会議員はウクライナのひどさを知らない。そのひどさに気づいたドナルド・トランプ大統領はもはやウクライナ支援をしていない(注1)。停止したのだ。誠実な国会議員であれば、日本政府はなぜウクライナ支援をしているのか、国会で追及すべきだろう。「クレプトクラ―ト」と呼ばれる「泥棒政治家」を支援すれば、日本国民の税金が盗まれるだけではないか。「盗人に追い銭」をするのであれば、その理由を徹底的に追及してほしい。「真っ黒なゼレンスキー政権」を支援する日本の政治家やオールドメディアは最悪だ。国民の税金を泥棒に渡しているのだから、そうした悪事に加担している以上、彼らもまた犯罪者と言えるだろう。

読者は、親ウクライナ報道をつづけてきた「ワシントン・ポスト」でさえ、11月22日付の「ゼレンスキーはかつてないほど脆弱だ。トランプは圧力を強めた」という記事のなかで、つぎのように書いている記述を精読すべきだろう。

「この怒りは、これまで政敵同士の間でさえも共有されてきた「ロシアに打ち勝つためには国が団結しなければならない」という戦時下の共通認識の限界を露呈した。その認識は今や、ごく少数の権力者たちが、多くの同胞を死に至らしめる戦争から利益を得ているという信じがたい事実によって覆されたのである。」

 

何が起きたのか

国家反腐敗局(NABU)と特別反腐敗検察庁(SAPOまたはSAP)は11月10日、ウクライナのすべての核発電所と複数の水力発電所を管理する国営企業(エネルゴアトム)の取引業者らが巨額のリベートを強制的に支払わされていた大規模な汚職事件を暴いたと発表した。これにより、ゼレンスキー政権の現役閣僚を含む側近が腐敗していたことが明らかになった。エネルゴアトムから約1億ドルを横領・資金洗浄し、その他の詐欺や金融犯罪に関与したという容疑がかかっている。捜査には計15カ月の作業期間、1000時間に及ぶ音声記録、70回以上の家宅捜索などが必要だったと捜査当局は付け加えた。11日なって、容疑者のなかにゼレンスキー大統領の側近であるティムール・ミンディッチが含まれていることをNABUが明らかにした(「キーウ・インディペンデント」を参照)。だが、10日に拘留された5人のなかにミンディッチは含まれていない。逃亡をはかったのである(注2)。

捜査機関はこの事件捜査を「ミダス」作戦と名づけている(注3)。同機関は資金洗浄と不正な富の蓄積を暴いたと発表し、請負業者に対し最大15%のリベートを要求する圧力がかけられていたとした(注4)。最高会議議員ヤロスラフ・ジェレズニャクは、自身のTelegramで、容疑者の中心物として、ゼレンスキー大統領の「財布」と呼ばれる、大統領が共同所有する制作会社「クヴァルタル95」のパートナーでもあるティムール・ミンディッチなどが含まれていることを明らかにした。

事件の概要を伝える動画のなかで、捜査機関は容疑者の実名を公表しなかった。ただ、犯罪組織のメンバーにはエネルギー相の元顧問、エネルゴアトムの保安担当執行役員、資金洗浄を担当するチームのメンバー4人、そして「メディアでよく知られた実業家」が含まれるとした。これら7人を特定した写真が下のリストである。

(出所)https://tt.inf.ua/files/upload/e8/fd/23/e8fd2371c2af4ed3b67624c215461a50.550×550.jpg

 

上段の左がティムール・ミンディッチである。中央がイーゴリ・ミロニュークで、当時、エネルギー相だったゲルマン・ガルシェンコ(ガルチシェンコ)の顧問を務めていた。右は、ドミトロ・バソフで、エネルゴアトムのセキュリティ担当エグゼクティブディレクターだ。この3人がエネルゴアトムとの取引業者にリベートを渡すように謀議をはかっていた、とNABUは考えている。

下段の4人はマネーロンダリングに使われるバックオフィスで働いていた。左は、実業家のオレクサンドル・ツケルマン(ツカーマン)で、ミンディッチの財務部門を担当していたと言われ、彼も国外逃亡した(「ストラナー」を参照)。その右はイーゴリ・フルセンコで、主な事業活動として情報化に関するコンサルティングを行う個人事業主として登録されている。一説には、彼は長距離巡行ミサイル「フラミンゴ」を製造するファイアポイントで働いているという(後述するようにミンディッチは同社にも関係しているようだ)。その右は、リュドミラ・ゾーリナで、個人事業主であり、その活動内容は商業活動および経営に関するコンサルティングである。もっとも右はレーシャ・ウスティメンコで、彼女も個人事業主であり、主な活動は「市場環境の調査および世論の調査」である。

ミンディッチとツカーマン以外の5人はすでに拘束されている。ただ、13日、ゾーリナとウスティメンコは保釈金(合計で3700万グリヴニャ)を払って保釈された。

ゼレンスキーは、ポーランド経由でイスラエルに逃亡したとみられるミンディッチとツカーマンに対して、13日になって制裁を発動した。制裁は3年間のみとされた。しかし、ほとんどの「国家の敵」に対しては、少なくとも10年間の制裁が課されるのが通例だから、この期間は短すぎる。さらに、ゼレンスキー大統領の制裁令では、ミンディッチとツカーマンはイスラエル国民であるとのべられており、彼らのウクライナ国籍については言及されていないという。だが、少なくともミンディッチは確実にウクライナ国籍を有している。このため、ゼレンスキーがまもなくウクライナ国籍を剥奪する可能性がある。

だが、こうなると、ミンディッチの捜索および身柄引き渡しは困難になる。ミンディッチが国籍を剥奪された後、イスラエルからウクライナに彼を連れ戻すことは法的に不可能だ。なぜなら、身柄引き渡しを要求する法的根拠がまったくなくなるからである。さらに、イスラエルは自国民を国外に引き渡さないことで知られている。つまり、ゼレンスキーはミンディッチをかばっているのであり、捜査協力をする気などまったくないということだ。

 

ドルの札束も見つかる

なお、この「ミダス」作戦の捜査の過程で、バーコードと米国都市名(アトランタ、カンザスシティ、ミネアポリス)が記載された密封されたドル札の束(下の写真)がNABUによって押収された。少なくとも400万ドルに相当するとみられ、自国通貨に換算すると約1億6800万ウクライナ・グリヴニャにあたる。

戦時下にあって、現在、ウクライナでは、個人口座からの1日あたりの引き出し上限は10万ウクライナ・グリヴニャに限られている。1人がこれを引き出すには、毎日銀行に通い、6年以上かかる。このため、企業取引を通じて、外貨が持ち込まれた可能性が高い。

他方で、ウクライナに外貨現金を持ち込むライセンスをもつ銀行はウクライナ戦争前には、オーストリアのライファイゼン銀行をはじめとして、ウクライナの銀行であるPUMB、クレドバンク、MTB銀行なども外国現金の供給にかかわっていた。戦争中、国営のプリヴァトバンクとオシャドバンクも外貨現金の輸入に加わった。ただ、実際にこのドルに関与したのは国有化されたセンス銀行(もともとはロシアのオリガルヒ、ミハイル・フリードマン所有のアルファバンク)であるとの見方がある。同行の広報はこれを否定しているという(「フォーブス」を参照)。現時点では公式の確認はない。

エネルギー分野における汚職を暴く作戦の一環として、NABUSAPが実施した捜索の様子を捉えた写真 / © НАБУ

(出所)https://img.tsn.ua/cached/025/tsn-0b4bc102/thumbs/x/89/ce/70f87a045ea4aae106e09aa01749ce89.jpeg

 

二人の大臣が辞任

ガルシェンコ(下の写真)は、2020年5月、エネルゴアトムの副社長に任命され、2021年にはエネルギー相に就任した。2025年7月、彼は司法相に任命されていた。この経歴から、彼は、現エネルギー相スヴィトラーナ・グリンチューク(同)や、2025年7月の解任前に自身が配置した複数の管理職を通じて、今なお同分野で影響力をもつ。11月12日朝、臨時閣議が開催され、ガルシェンコを司法相から解任することが決定された。グリンチュークも同日、辞表届を提出した。グリンチュークはエネルギー省でガルシェンコが大臣当時、副大臣を務め、その後環境・天然資源相になった後、エネルギー相に就任していた。

ゼレンスキーは12日午後、ユリヤ・スヴィリデンコ首相と詳細な会談を行ったと説明し、また法務大臣とエネルギー大臣は現職に留まることはできないことを強調したと発表した。どうやら、自分は「ミダス」作戦とは無関係であると装う方針を決めたことになる。

だが、11月12日、NABU検察官は、ガルシェンコ、ミンディッチらの盗聴記録のエピソードの一つを挙げた(ウクライナの情報を参照)。このエピソードが「ミンディッチの影響力を裏づける」というのである。それは、ミンディッチがゼレンスキーにショート・メッセージ・サービス(SMS)を送ると、ゼレンスキーがガルシェンコに電話をかけてきた事実を指している。これは、盗聴されていた会話のなかで、ガルシェンコがミンディッチに大統領に何を書いたのかと尋ね、ミンディッチが「ゲル(ゲルマン・ガルシェンコ)があなたと話したがっている」と答えたことからわかる(彼らはロシア語を話しており、ここでは「ゲルマン」というロシア語をあえて使っている)。なお、このとき、ミンディッチは当時エネルギー相だったガルシェコの顧問という肩書きをもっていた。つまり、ミンディッチ、ガルシェンコ、ゼレンスキーは一本の糸でつながっていると考えられる。

ゲルマン・ガルシェンコ

(出所)https://parlament.ua/dossier/galushhenko-german/

 

スヴェトラーナ・グリンチューク

(出所)https://www.facebook.com/s.grynchuk/

 

別の腐敗ルート①:チェルニショフ前副首相

腐敗ルートはこれだけではない。14日になって、ウクライナ国家反腐敗局(NABU)は、エネルゴアトム汚職事件に関与した元副首相に対し、不正蓄財の容疑で告発状を送達したと発表した。これはオレクシー・チェルニショフ前副首相のことである。彼は、このリベート計画で約143万ドルを受け取っていたという(その額は120万ドルと、現金で10万ユーロ近くに達する。資金は、このスキームの参加者の一人が所有するオフィスや医療クリニックで受け渡されていた。最後の50万ドルは、チェルニショフが汚職事件の容疑者となった後、彼の妻に渡されたという)。

「ウクライナ・プラウダ」が11月12日付で報じた「ゼレンスキーの「豚飼いたち」。大統領の友人たちが戦争中に国を略奪した方法」という記事を読めば、真相がみえている。チェルニショフが下の写真の豪華な4棟の建築に絡んでいたとみられている。NABUとSAPは4棟の建設事件を捜査しており、すでに20件ほどの捜索を行い、チェルニショフが建設者である証拠をつかんだというのだ。どうやら、エネルゴアトムから横領した資金で満たされたミンディッチの影の金庫によって建設費を調達していたようだ。

そもそも、この4棟がだれのためのものかは不明だ。しかし、少なくとも1棟はゼレンスキーのためのものであるとみられている(「ストラナー」を参照)。

興味深いのは、悪党間の人間関係だ。記事は、ミンディッチがチェルニショフを「良い人物」としてゼレンスキーに推薦し、チェルニショフの妻がファーストレディのエレナ・ゼレンスカと積極的に親交を深めはじめ、ファーストレディはチェルニショフ夫妻の娘の洗礼式を行うまでになる。2019年にゼレンスキーが大統領に選出されて以来、チェルニショフはキーウ州知事、地域開発・地域社会大臣、国営石油ガス会社ナフトガズの最高経営責任者など、さまざまな政府職を歴任してきた。2025年6月には別の事件で贈収賄および職権乱用の容疑で起訴された。7月に1億2000万フリヴニャ(約2900万ドル)の保釈金で釈放されている。同月下旬、副首相兼国民統合大臣の職を解任された。

協同組合「王朝」の四つの不動産

(出所)https://www.pravda.com.ua/rus/articles/2025/11/12/8007045/

 

別の腐敗ルート②:軍事企業ファイアポイント

別の腐敗ルートもある。それは、ミンディッチと、ドローン(無人機)や長距離巡行ミサイル「フラミンゴ」の製造開発企業ファイアポイントとの関係である(この問題については、「現代ビジネス」の拙稿「腐敗まみれのウクライナ軍事産業:ゼレンスキー周辺は「真っ黒」」で詳述したのでそちらを参考にしてほしい)。すでに、8月29日付の「キーウ・インディペンデント」の特ダネ「ウクライナの新型巡航ミサイル「フラミンゴ」メーカー、汚職捜査に直面」が報じたように、ファイアポイントの非公式の受益者とされるミンディッチとのつながりがNABUに追及されていたのである。

NABUの疑惑は、ファイアポイントが政府契約でドローンを供給する際に、部品の価格、UAVの数量、あるいはその両方を水増ししていたことに関連している。エネルゴアトムへの納入資材などを水増ししてリベートとして受けとっていたのと同じ手法である。

先の「ウクライナ・プラウダ」による疑惑報道後、同社の株式はサウジアラビア企業に売却された。これはミンディッチが実質的な所有者であるとの疑惑を回避するための措置だったという。

裁判で公開された会話の断片によれば、先に紹介したフルセンコは、動員を免れウクライナ国外への渡航を可能にするため、ファイアポイントに正式に雇用されていた(「キーウ・インディペンデント」を参照)。録音では、フルセンコが同事件で起訴された別の実業家、ツカーマンと会話しており、二人はフルセンコが最近ファイアポイントに正式な職を得たことについて議論し、フルセンコの上司であるツカーマンは、ファイアポイントでの正式雇用に関する詳細をフルセンコに説明している。フルセンコが雇用に関連する税金について言及すると、ツカーマンは会社が代わりに税金を支払うとのべている。

SAPの検察官によれば、同庁のデータではフルセンコは2025年3月19日からファイアポイントに管理者として雇用されていたという。戒厳令下では、18歳から60歳のウクライナ人男性は例外を除き出国が禁止されているにもかかわらず、フルセンコは2018年1月から2025年8月22日までの期間、戒厳令下を含む計26回の海外渡航を行っているとの情報もある。ウクライナ国防省は戦時中、優先的な防衛契約業者に特別な特権を付与しており、一定数の男性従業員が動員義務および渡航制限から免除する措置を悪用していた模様だ。

ほかにも、ミンディッチは国防相当時のルステム・ウメロウないしウメロフ(2025年7月からウクライナ国家安全保障・国防会議事務局長)にも「影響力」をもっていた(注5)。つまり、ミンディッチは低品質の軍備を国防省に高額で購入させてリベートを得ることが可能であったと考えられる。

 

ユダヤ人脈

ミンディッチはユダヤ人脈を巧みに利用してのし上がってきた。ミンディッチは1979年9月19日、ドニエプロペトロフスクの企業家ミハイル・ミンディッチとステラ・ミンディッチの家庭に生まれた。ティムール・ミンディッチの義母アラ・ヴェルバーがインタビューで語ったところによると、父親は2006年頃にイスラエルの病院で亡くなった(「RBC」を参照)。彼は、ウクライナで最大級のエンターテインメントコンテンツ制作会社の一つ、「クヴァルタル95」を母体として2003年に設立された「Studio Kvartal 95」の共同経営者である。同社の創設者はゼレンスキーであり、2019年にウクライナ大統領に選出された後、彼は「クヴァルタル95」の株をミンディッチに譲渡した。

クヴァルタル95の番組の多くは、オリガルヒ(寡頭資本家)のイーホル・コロモイスキーが所有するウクライナの「チャンネル1+1」で放映された(注6)。さらに、1+1メディア持ち株会社はクヴァルタルTVスタジオチャンネルを所有している。コロモイスキーによると、ウラジーミル・ゼレンスキーに彼を紹介したのはミンディッチだったという。コロモイスキーはまた、ミンディッチは過去に娘の婚約者だったと語っている。

つまり、ミンディッチ、ゼレンスキー、コロモイスキーの3人はともにユダヤ系ウクライナ人として互いに持ちつ持たれつの関係であったと思われる。だからこそ、ミンディッチは、彼と実業家テイムラズ・ヒヒナシュヴィリがルクセンブルクに登記された会社であるMineral Assets Corporation SAの共同所有者でもあり、サンクトペテルブルクを拠点とするNew Diamond Technology LLC(以下NDT)を数年間所有していた。人工ダイヤモンドの製造にもかかわってきたのである。

 

ゼレンスキーの腐敗はプーチンとそっくり

ゼレンスキーがミンディッチに不法な手法をやらせて、自分の懐を肥やそうとする手法はウラジーミル・プーチン大統領の手法とよく似ている。プーチンの場合、「連載(116):プーチン体制を支えるオリガルヒ:恣意的な企業支配の現状()」で紹介したローテンベルグ兄弟を使って利益を捻出したり、チェリストの友人を利用したりしながら、数々の腐敗を重ねてきたとみられている。

チェリストについては、2016年に刊行した拙著『プーチン露大統領とその仲間たち』のなかで、つぎのように書いたことがある。

「姉のマリヤは1985年4月28日生まれで、今年31歳になる。サンクトペテルブルク大学で生物学を学んだ後、モスクワ大学で医療を研究し研究者の道を歩んでいるとされる。彼女はすでにヨリト・ファーセンというビジネスマンと結婚しており、一時、オランダに在住したが、現在、モスクワに住んでいるとみられている。なお、彼女の名づけ親と言われるチェリスト、セルゲイ・ロルドゥギンはすでに紹介した銀行「ロシア」株、ノヴァテク株などを保有しており、プーチンとの不明瞭な関係が2016年4月に入って話題となっている。」

なぜ話題となったかというと、いわゆる「パナマ文書」を分析した結果が2016年4月に公表されて、そのなかで、プーチンの友人ロルドゥギンの名前が公表されたからである。その後の調査で、ロルドゥギンが所有するソネット・オーバーシーズ社についてわかったところでは、同社会社は、ロシアの大物実業家たちから「融資」という名の寄付を受けていた。たとえば、2007年7月、Sonnette Overseas社は別のオフショア企業であるLevens Trading社から、年利2%で600万ドルの融資を受け、わずか数カ月後、貸し手は1ドルの「報酬」でこの債務をロルドゥギンに免除したという(「ノーヴァヤガゼータ」を参照)。こんなかたちで、プーチンは友人を使って不正蓄財を隠蔽してきた可能性が高い。

実は、ウクライナにおいても、前大統領のペトロ・ポロシェンコは親友でビジネスパートナーのオレグ・スヴィナルチューク(2014年までの名前はグラドコフスキー)を使って不正蓄財に励んだ。彼は国家安全保障・国防会議の第一副書記だった。

11月19日に明らかになった情報によると、NABUがミンディッチに提起した容疑状(公判前調査)には、つぎのように書かれている。

「公判前調査では、2025年1月から2月までに、ミンディッチ・ティムール・ミハイロヴィッチは、ウクライナで戒厳令が敷かれた状況、ウクライナ大統領ゼレンスキー・V・Aとの友好関係の存在、 国家当局や法執行機関の現・元最高幹部との人脈を利用し、国家において多大な影響力を享受し、自身の利益を満たすため、ウクライナのさまざまな経済分野において犯罪行為を組織的に実行し、不法に富を蓄積することを決意した。」

ミンディッチとゼレンスキーとの間に「友好関係の存在」(наявність дружніх відносин)という表現が使われているのだが、その意味は重い。

 

確信犯としてのゼレンスキー

11月14日付のNYTは、「ゼレンスキー大統領のイメージは汚れた――汚職疑惑が彼の側近を揺るがしているからだ」という記事を報じた。記事はゼレンスキーのイメージダウンという「柔らかな表現」にとどめている。しかし、今回の「ミダス」作戦は、ゼレンスキーが首謀者であることを指し示している。なぜかと言えば、ゼレンスキーは事件を潰すために法律改正までしたからだ(この経緯について詳細に分析したのが拙稿「ウクライナ各地でついに始まった「反ゼレンスキー」大規模デモ」である。あるいは、「知られざる地政学」連載(101):「ゼレンスキー=悪魔」騒動の顚末と教訓()を読んでほしい)。

2025年7月、ゼレンスキー政権は国内の反腐敗機関であるNABUとSAPの独立性を潰そうとして露骨な動きをしたのである。最初に、ウクライナでもっとも影響力のある反腐敗運動家の一人である、反汚職行動センターのヴィタリー・シャブニン執行委員長が国家捜査局によって兵役逃れや詐欺の容疑で11日拘束された。これは、ゼレンスキー大統領の忠実な支持者と評される人物ルスラン・クラフチェンコが新検事総長に任命された直後に提起されたのだ。捜査にあたった国家捜査局に圧力をかけていたのは、大統領府のオレグ・タタロフ副長官(下の写真)であると目されている(注7)。

ほかにもある。7月21日には、検事総長事務所、ウクライナ保安局(SBU)および国家捜査局は、NABUの捜索を行った。7月22日朝時点の情報によると、19人の職員を対象に80件の家宅捜索が行われた。数人が逮捕された(「メドゥーザ」を参照)。NABU職員が関与した交通事故に関する捜査を行ったとされているのだが、その交通事故は2021年のものであり、いかにこの捜査が恣意的なものであったことがわかる。NABUとSAPOに「ロシアのエージェント」を発見したとの口実で大規模な捜索が行われたのだ。

拘束された者には、父親がロシア国籍をもつNABUの刑事部門の責任者ルスラン・マハメドラスロフがいる。もう一人の職員は国家反逆罪で告発されている。「キーウ・インディペンデント」によれば、SBUは、マハメドラスロフがウクライナから逃亡した親ロシア派議員フェディル・フリステンコと接触していると主張している。

オレグ・タタロフ

(出所)https://www.president.gov.ua/storage/j-image-storage/19/71/93/339873451a2c22fdc5be23c605bf0772_1627554575_extra_large.jpeg

 

自分への捜査を潰しにかかったゼレンスキー

22日、ゼレンスキーの大統領府はロシアスパイの脅威を理由に、汚職対策機関の独立性を制限する法案の議会採決を急がせた。7月22日午前、議会の法執行委員会は臨時会議を開く。戒厳令下の行方不明者に関する刑事訴訟法の改正に関する法律案第12414号の修正案が審議された。法案12414号の当初案は、戒厳令中の行方不明者捜索手続きの簡素化を規定していた。しかし最終版には、NABUとSAPの業務に関する修正案が含まれていたのだ。委員会はこの修正案を承認し、同日、大統領派閥「人民の奉仕者」の代表は、修正法案を議会の議題とし、採決に持ち込んだ。ゼレンスキーは、「ロシアの影響」が疑われる機関の独立性を弱める必要を主張していた。ゼレンスキーの支配下にある検事総長のもとにNABUやSAPを従属させて、自分に不利な捜査や起訴を封じ込めようというのである。

法案は可決され、23日に施行されたが、このとんでもない動きにウクライナ市民の大規模な反対デモが起きる。こうしたゼレンスキーの反動的かつ独裁的な弾圧姿勢に対して、欧州の一部政治指導者も懸念を表明した結果、この法律はすぐに撤回されるに至った(同じく専制的なドナルド・トランプ政権はゼレンスキー政権のこうした暴挙に対して、少なくとも表面上は表立った反発は示さなかった)。

ウクライナで大規模な戦争が始まって以来初の大規模集会

(出所)https://www.youtube.com/watch?v=ANi4TMINwW8&t=17s

 

ゼレンスキー政権のもくろみ

しかし、ゼレンスキーおよびその周辺は決して自分たちへの捜査がおよばないようにするために工作を継続してきた。ゼレンスキーの権力源泉であるウクライナ保安局(SBU)と検察総局が9月6日に発表したところによると、ウクライナ当局は、前述したフリステンコ議員を拘束した(「キーウ・インディペンデント」を参照)。どうやら、ゼレンスキー政権はフリステンコに対して、NABUにおける「ロシアの影響」を証言させて、NABUの捜査自体を否定的に見せかけようとしているのだ。

ゼレンスキーらの「悪だくみ」は着々と進んでいた。しかし、11月4日に欧州委員会から欧州議会、理事会、欧州経済社会委員会および地域委員会への伝達文書 として公表された、ウクライナがEUに加盟するために行っている改革を評価した報告書「Ukraine 2025 Report」のなかで、ウクライナの腐敗防止策について厳しい批判があったため、「悪だくみ」の実行が遅れていたのである。

報告書は、紹介した7月の立法騒ぎについて、「国会は7月に法律を採択し、NABUとSAPOの独立性のための重要な保護措置を解体し、その運営業務を政治的に任命された検事総長の権限下に置いた。これらの改正は、ウクライナの腐敗防止の枠組みを著しく弱めるものであった」、と的確にのべている。そのうえで、「全体として、こうした動きはウクライナの反腐敗アジェンダへのコミットメントに疑問を投げかけている」と結論づけている。「ウクライナは腐敗防止の枠組みを前進させ、顕著な改革の成果を後退させないようにすべきである」と指摘し、「高レベルの汚職訴訟における手続きの遅延や妨害に対処すべきである。時効とその中断・停止事由は、欧州の基準に沿って見直され、調整されるべきである」という提言まで書かれている。

このため、「悪だくみ」を実行できないままでいたゼレンスキー側に対して、NABU・SAPが先回りして鉄槌を下したのが今回明るみに出た「ミダス」作戦というわけだ。しかも、紹介したように、ミンディッチとファイアポイントとの関係から、ゼレンスキー政権が軍備をめぐっても猛烈に腐敗してきた実態が明らかにされる可能性がある。

 

ウクライナをめぐる政局

最後に、ウクライナをめぐる政局について、わかりやすく概説しておこう。まず、巨悪であるゼレンスキー政権はいま、ミンディッチが首謀者とするグループによる腐敗を糾弾するという姿勢を示すことで、ゼレンスキーが本当の首謀者であることを隠蔽しつづけようとしている。

「ゼレンスキー一味」は、オールドメディアに圧力を加えて、ここで紹介したような「真っ黒なゼレンスキー」という実態を隠そうと必死だ。その典型がイェルマーク大統領府長官の顧問、ミハイル・ポドリャクだ。「エネルギー部門における腐敗スキームの調査に関するニュースは、残念ながら驚くべきことではない」とし、これは、「クレムリンが数十年にわたりウクライナをその影響力の範囲内に留めるためのシステムを構築してきた過去からの論理的な反響である」という彼の意見は、ゼレンスキーの「悪」をロシアに帰そうとする不誠実きわまりない論理にすぎない(11月13日付のポドリャクの「テレグラム」を参照)。イェルマーク自身、ゼレンスキーが汚職との「闘いを宣言」し、「絶対的に自由な捜査」を許可したのだから、ゼレンスキー自身は疑惑の外にあるべきだ、と発言している(Politicoを参照)。しかし、イェルマーク自身、録音記録のなかで「アリ・ババ」というコードネームで登場していることを忘れてはならない。アンドリー・ボリーサヴィチ・イェルマークは「ABイェルマーク」と書ける。ABは「alibaba」でもあるからだ。そして、彼は以前、ゼレンスキーとミンディッチが設立したテレビ制作会社「クヴァルタル95」の最高顧問を務めていたことを思い出すべきだろう(「テレグラフ」を参照)。

これに対して、もっとも批判されるべきは欧州の政治指導者たちだ。彼らは、ゼレンスキーに戦争をつづけさせため、どう考えても「真っ黒」なゼレンスキーそのものの罪を問おうとはしていない。ミンディッチを逃亡させたゼレンスキーは当面、彼の腐敗への直接関与という嫌疑を免れることができる。そのため、ゼレンスキーはいざとなれば、自分の周辺にいる人物を含めて、腐敗を理由に斬ればいいと考えているに違いない。たとえば、ゼレンスキーの背後にいて、腐敗問題にも関与していると思われるアンドリー・イェルマーク大統領府長官や、彼の子飼いユリヤ・スヴィリデンコ首相を退陣させて、ゼレンスキー政権の「リセット」をはかることさえありうるだろう(こうしても、ゼレンスキーが大統領選で再選される可能性はもはやゼロに近い)。

他方で、欧州指導的政治家は、「ロシアの侵略戦争開始以降、EUとその加盟国がウクライナとその国民を支援するため1776億ユーロを動員した」事実に対する責任を回避するため、ゼレンスキーを支援しつづけようとしている。ゼレンスキーを否定すれば、自分たちの行った支援の正当性が疑われかねないからである。そのため、欧州の指導者は、ウクライナ戦争を止めさせるどころか、ゼレンスキーに強制動員年齢を25歳から22歳に引き下げさせてあくまで戦争支援を継続しようとしているようにみえる。

 

戦時統一内閣の模索

ゼレンスキーの腐敗を糾弾しようとするウクライナの勢力のなかには、領土奪還やウクライナ語の強制などを当然と考える過激なナショナリストがいることから、彼らは、ゼレンスキーを大統領の座から引きずりおろすか、その機能を国会議長などに移し、戦時統一内閣を形成しようという構想もある。具体的には、「ウクライナ・プラウダ」のオーナーのトマーシュ・フィアラや、ペトロ・ポロシェンコ前大統領、ヴィタリー・クリチコキーウ市長など、一部の野党政治家らで構成される「反ゼレンスキー」連合によってゼレンスキーの権力を奪取しようというのである。とくに、ゼレンスキーの権力源泉となっている連邦保安局(SBU)や国家捜査局、検察総局をゼレンスキーから遠ざけることで、議会や行政府におけるゼレンスキー一派の専制を停止させようとしている。

ただ、彼らの多くはナショナリストであり、戦争継続派とも言える。ゆえに、彼らは欧州からの支援継続を求めて、欧州の政治指導者と結託する用意があるようにみえる。ゼレンスキーは代えても、戦争は継続するということだ。

もっとも有力な反対勢力となりうるのは、ウクライナ最高会議(国会)で与党会派「国民のしもべ」のトップを務めるダヴィド・アラハミヤであると考えられている。彼および、イェルマーク大統領府長官と対立関係にある現第一副首相兼デジタルトランスフォーメーション大臣のミハイロ・フェドロフが協力すれば、ゼレンスキー政権を葬り去ることも可能かもしれない。しかし、いまのところ、目立った闘争は起きていない。

 

多くのウクライナ市民は?

もちろん、多くのウクライナ市民は怒っている。親ウクライナの論調を貫いてきたThe Economistさえ、11月17日付の「ウクライナ政府を揺るがす巨額の腐敗スキャンダル」という記事の最後に、「ゼレンスキーは清算の日に直面している。選択肢は多くない。片足を切断するか、全身に感染症が蔓延し死ぬかのどちらかだ」というある高官の言葉を書いている。事態はきわめて深刻なのだ。

それにもかかわらず、ゼレンスキーが自らの腐敗に向き合わず、トカゲの尻尾斬りでお茶を濁そうとしていることだけでなく、何百万人ものウクライナ国民が停電に苦しむ一方で、大統領の側近たちはエネルギー企業を略奪してきた事実はあまりにもひどい。毎日何千人ものウクライナ人が戦線で命を落としている一方で、カネ儲けに興じている人々がゼレンスキー周辺に集中していることは、だれがみてもゼレンスキーそのものの責任とみなすだろう。もはや社会全体の士気は低下し、徴兵忌避者や脱走兵たちに正当性があるかにみえてくる。

ウクライナ国民は、ウクライナ経済が欧州の支援でかろうじてもっていることを知っている。もし欧州の支援が停止されれば、間違いなくウクライナ経済は破綻する。それは、ウクライナの決定的な敗戦につながるだろう。

そうであるならば、欧州による支援継続はきわめて重要だ。しかし、米国がウクライナへの資金援助の継続を拒否した後、すべての負担が欧州の肩にのしかかった欧州政治家は困惑している。ウクライナ政府が要求している財政赤字の補填や武器支援の総額は約1200億ドルにのべるとされており、こんな資金をウクライナに供与する余裕は欧州側にはない。仏独伊とも財政的に厳しい状況に置かれている。

このため、欧州側はいわゆる「賠償ローン」とか「賠償クレジット」というかたちで、欧州に凍結されているロシアの資産を事実上、没収して、ウクライナへの支援資金とする案を実現させようとしている(詳しくは拙稿「カネのためにウクライナ戦争継続を求める欧州指導者たちが躍進させた「チェコのトランプ」」を参照)。だが、ベルギーにある、ウクライナ侵攻以来凍結されている約2000億ユーロのロシア資産を保管する預託機関ユーロクリアの最高経営責任者、ヴァレリー・ウルバンは没収の場合にEUを提訴することを「排除しない」と語っている(「ル・モンド」を参照)。ベルギー政府も「賠償ローン」に反対している。

11月17日、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EU各国政府に宛てた書簡のなかで、ウクライナの2026~2027年における残存資金需要を1357億ユーロと試算し、そのウクライナの資金需要を満たすためには、凍結されたロシアの資産を利用した融資を含む3つの選択肢があると通知した(「ロイター通信」を参照)。同文書は、いわゆる「賠償ローン」以外に、加盟国による資金提供による返済不要の支援オプションと、EUが金融市場で借り入れるオプションが、2028年に発効するEUの新長期予算が採択されるまでの「つなぎ策」となり得るほか、EU資金による融資の保証として機能し得るとした。残存資金需要を1357億ユーロは、欧州委員会が提案するロシア凍結資産の活用により1400億ユーロの融資があれば賄える一方、無償支援オプションを選択した場合、ウクライナは今後2年間でEU加盟国から少なくとも900億ユーロの資金を必要とする、と書簡は指摘している。いずれにしても、EUは戦争を継続させる気でいる。

しかし、本当は、ウクライナの腐敗はエネルギー部門や軍事部門だけではない。鉄道部門では、輸送量が減って余った電力を闇に流したり、ウクライナ鉄道の内部関係者を介した動員免除の証明書を販売したりする腐敗が蔓延している。他方で、戦況はウクライナの敗色が濃くなる一方だ。こんなウクライナに血税を投じる意味などあるのだろうか。

 

ウクライナ戦争を停止せよ!

今後、もっとも重要なことは、ここで紹介したようなウクライナの現状が欧州や日本の人々にしっかりと報道されるかどうかだ。彼らが現実を知れば、多くの人々はウクライナを支援することに疑問をもつだろう。たとえば、イタリアのマッテオ・サルヴィーニ副首相(極右政党リーグ党首)は14日、ウクライナにこれ以上の援助を提供することはロシアとの戦争を終わらせる助けにはならず、ウクライナ政府を揺るがしているスキャンダルに言及し、「さらなる腐敗を助長する」可能性があるとのべた(「ロイター通信」を参照)。

支援がなければ、ウクライナは立ち行かない以上、戦争を停止し、和平協定を結べばいいのである。しかも、いま、前線では、ウクライナ軍は苦戦を強いられている。すでに何度もウクライナが敗戦濃厚だと書いてきたが、それが白日の下にさらされようとしている。

停戦・和平へと舵を切る場合、残された課題がある。それは、ウクライナ軍内部にいる超過激なナショナリスト軍団だ。あくまで戦争を継続したいと考える軍人が数多く存在する。こうした連中をどう処遇するか。ここまで考えなければ、本当の意味での戦争終結には至らないであろう。

それでも、ゼレンスキーおよびそう周囲の「悪党」たちがいるままでは、支援しても、その資金の一部が盗まれるだけであることをオールドメディアはきちんと報道すべきだ。無視することで、事実を伝えないのは、明らかな情報操作であり、それは民主主義を唾棄する自殺行為だ。ゆえに、この連載をできるだけ多くの人に知ってほしい。拡散してほしい。オールドメディアの「嘘」と「不誠実」を糾弾するために。なぜなら、本稿より優れた日本語論考が存在しないからである。

 

 

【注】

  • トランプは「ロシアとウクライナが我が国にもたらした損害をみてほしい。我々は3500億ドルを費やした。もはや支出はしていない。今や彼らはNATOを通じて我々に支払っているのだ」、と11月にのべた(ウクライナの情報を参照)。ただし、これは正確ではない。ウクライナが米国から資金を得る唯一の手段は、ウクライナ強化投資資源促進・金融仲介基金(Facilitation of Resources to Invest in Strengthening [O.R.T.I.S.]Ukraine Financial Intermediary Fund)である。この金融仲介基金(FIF)の目的は、ウクライナが行政・サービス提供能力を維持し、復旧・復興・改革のアジェンダを計画・実施できるよう支援するための協調的な資金調達・支援メカニズムを提供することである。このため、FIFは、マクロ経済の安定の維持、ウクライナの改革アジェンダの推進、債務の持続可能性の回復、国際通貨基金(IMF)のウクライナへの関与との一貫性の確保、ウクライナの復旧・復興の促進といった目的に沿った非軍事的なプロジェクト、プログラム、活動に資金を提供する。世界銀行理事会が、2024年10月10日にこのFIFの設立を承認した。

これを促進したのはバイデン前政権であり、2024年12月に、ウクライナへの融資枠200億ドルを設定してこのFIFが実際に設立された。2025年半ばまでに35億ドル以上が同基金からウクライナに支払われ、全額の200億ドルは2026年上半期末までに拠出される見込み。

  • この逃亡の背後には、SAPのアンドリー・シニューク副代表がいるとの説がある(「ウクライナ・プラウダ」を参照)。実は、ゼレンスキーらは、SAPのトップであるオレクサンドル・クリメンコを職務停止に追い込んで、その職務を彼の副官であるシニュークにさせる計画であったみられている。こうすることで、ゼレンスキー政権幹部への立件を潰そうとしていたのである。なお、シニュークは2025年11月14日付でシニューク本人の希望によりSAPを辞任した(RBCを参照)。これは、紹介した計画の信憑性を高めている。
  • ギリシャ神話のミダス王は「触れたものを黄金に変える手」で有名だが、疑惑の中心人物ミンディッチの自宅のトイレにある「金色の便器」[下の写真]を想起させるための名称だ。「金色の便器」はもともと、2014年2月のクーデターでロシアへの逃亡を余儀なくされた当時のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領の別荘にあると話題になったものだが、実際には、「話題になっていた黄金の便器を発見することはできなかった」という報道がある。その代わり、黄金のシャワーと金メッキの洗面台があったという。

ミンディッチの金色の便器があるトイレ  Фото: Скрин видео

(出所)https://focus.ua/ukraine/717015-zolotoy-unitaz-na-mramornom-polu-nardep-pokazal-foto-iz-kvartiry-timura-mindicha-video

(備考)ジェレズニャク議員が「ミンディッチのアパートにある、金製のトイレとビデが設置されているとされるトイレの写真」として2025年7月30日に公開したものである。

 

  • リベートを要求して懐に入れる手法はミンディッチの親族によっても行われていた。2025年6月、NABUは国外逃亡を図っていた、いとこのレオニード・ミンディッチを逮捕した。彼は電力会社ハルキウオブルエネルゴから設備調達に関連して1600万ドルを横領した容疑で起訴されている(「キーウ・インディペンデント」を参照)。6月9日、レオニードは800万フリヴニャの保釈金で釈放された。
  • ウメロフが腐敗していることは有名だ。ウクライナの「腐敗対策センター」が2025年9月に発表したところでは、ウメロフの家族が米国に8件の高級不動産を所有していることが明らかになった(「ロシア新聞」を参照)。ウクライナの「腐敗対策センター」が発表した。同組織によると、ウメロフの親族はフロリダに三つのアパート、ニューヨークに一つ、マイアミ近郊に四つの別荘を所有している。これらの物件の一部は賃貸物件であり、一部は直接所有している。これらの物件は、ウメロフの妻レイラ、父親、兄弟、そして国家安全保障会議事務局長の子供たちが管理している。ウメロフが申告しているのは、妻と子供たちが住む4平方メートルのアパート1室だけだ。この住宅は100万ドル以上の価値がある。同じ住宅団地内のほぼ同じ面積の2つのアパートには、元大臣の妻と父親が登録されている。「フロリダ州の別荘の1つには、ウメロフの妻が年間約2万4000ドルを受け取っている会社が登録されている」という。

先に紹介した公判前調査にも、「2025年の間に、ミンディッチ・T・Mが、ウクライナエネルギー大臣のガルシェンコ・G・Vに影響力を行使してエネルギー分野で、またウクライナ国防大臣のウメロフ・R・Eに影響力を行使して防衛分野で、犯罪行為を行った事実が確認された」と書かれている。

  • コロモイスキーは2023年9月、逮捕された。彼は2013年から2020年にかけて、5億フリヴニャ(1360万ドル)以上の資金を管理下の銀行を通じて海外に引き出し、合法化した罪に問われているほか、1992年に設立したPrivatbankの92億フリヴニャ(2億5000万)ドルを継承した罪にも問われている。
  • タタロフ副長官は「問題児」だ。タタロフは2020年、NABUにより、元議員マクシム・マイキタスの代理として法医学専門家に25万フリヴニャ(1万ドル)の賄賂を渡した罪で起訴されたことがある。この事件は、ゼレンスキーの子分であるイリーナ・ヴェネディクトワ元検事総長、ウクライナ保安局(SBU)、ウクライナの腐敗した司法当局によって妨害され、事実上破棄された。

2020年、オレクシー・シモネンコ副検事総長(当時)は裁判所の判決を口実に、タタロフ事件を独立したNABUから大統領管理のウクライナ保安庁(SBU)に移管した。NABUは、タタロフ事件は完全に同局の管轄内であるため、移送は違法であると考えている。その後、シモネンコはタタロフ事件を担当する検事団を交代させ、事件を妨害しようとした。2021年、裁判所はタタロフ事件の捜査延長を拒否した。シモネンコの部下である検事たちは、裁判にかける期限に間に合わなかったことで、この事件を事実上葬り去ったのである。

 

 

塩原俊彦

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。評論家。『帝国主義アメリカの野望』によって2024年度「岡倉天心記念賞」を受賞(ほかにも、『ウクライナ3.0』などの一連の作品が高く評価された)。 

【ウクライナ】

『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社、2023)、『復讐としてのウクライナ戦争』(社会評論社、2022)『ウクライナ3.0』(同、2022)、『ウクライナ2.0』(同、2015)、『ウクライナ・ゲート』(同、2014)

【ロシア】

『プーチン3.0』(社会評論社、2022)、『プーチン露大統領とその仲間たち』(同、2016)、『プーチン2.0』(東洋書店、2012)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店、2009)、『ネオ KGB 帝国:ロシアの闇に迫る』(東洋書店、2008)、『ロシア経済の真実』(東洋経済新報社、2005)、『現代ロシアの経済構造』(慶應義塾大学出版会、2004)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書、2003)などがある。

【エネルギー】

『核なき世界論』(東洋書店、2010)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局、2007)などがある。

【権力】

『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016)、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet、2013)などがある。

【サイバー空間】

『サイバー空間における覇権争奪:個人・国家・産業・法規制のゆくえ』(社会評論社、2019)がある。

【地政学】

『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社、2023)、『帝国主義アメリカの野望:リベラルデモクラシーの仮面を剥ぐ』(社会評論社、2024)、『ネオ・トランプ革命の野望:「騙す人」を炙り出す「壊す人」』(発行:南東舎、発売:柘植書房新社、2025)

 

 

 

(Visited 29 times, 4 visits today)

コメントを残す

サブコンテンツ

塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

このページの先頭へ