『ウクライナ3.0』の上梓について

『プーチン3.0』についで、『ウクライナ3.0』を7月末に刊行します。今度は、紙版と電子版を同時に発売するそうです。

『ウクライナ3.0』は、ウクライナの政権にスポットを当てたものとなります。プーチンだけでなく、ゼレンスキーに注目することで、いまの「ウクライナ戦争」をより深く考察することが可能となると思います。

 

War With Russia?

わたしの友人から勧められて、わたしの考えに近い伊藤貫が登場するビデオ(https://www.youtube.com/watch?v=Ehf-NodXCYM)を観ました。そのなかで、彼はStephen F. Cohen, War With Russia?, 2019を紹介していました。早速、この本を電子書籍で読みました。大変に参考になりました。『ウクライナ3.0』においても、3カ所で引用しています。

拙著のなかには、あえて書かなかったことで、とくに重要だと思う部分をメモ代わりにここで紹介してみたいと思います。

第一はつぎの部分です。それは、2014年2月以降のウクライナ暫定政権、それにつぐポロシェンコ政権、ゼレンスキー政権の問題点についてです。

*The violent overthrow of Ukraine’s constitutionally elected president, Victor Yanukovych, in February 2014.

*Kiev’s refusal to seriously investigate the “Maidan snipers,” whose killings precipitated Yanukovych’s ouster, assassins who now seem to have been not his agents, as initially alleged, but those of right-wing Maidan forces.

*The new government’s similar refusal to prosecute extreme nationalists behind the subsequent massacre of pro-Russian protesters in Odessa shortly later in 2014.

*Ant the new Maidan government’s unwillingness to negotiate with suddenly disenfranchised regions of Eastern Ukraine, which had largely voted for Yanukovych, and instead to launch an “anti-terrorist” military assault on them.

*Even Poroshenko’s subsequent election as president was questionably democratic, opposition regions and parties having been effectively banned.

つぎに、わたしが拙著『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』において何度も書いてきた、2014年2月21日の協定をめぐる記述を紹介しましょう。

A vital episode amid the February 2014 crisis has been forgotten—or deleted. The foreign ministers of three EU countries (France, Germany, and Poland) brokered a compromise agreement between the Ukrainian president and party leaders of the street protesters. Yanukovych agreed to an early presidential election and to form with opposition leaders an interim coalition government. That is, a democratic, peaceful resolution of the crisis. In a phone talk, President Obama told Putin he would support the agreement. Instead, it perished within hours when rejected by ultranationalist forces in Maidan’s streets and occupied buildings. Neither Obama nor the European ministers made any effort to save the agreement. Instead, they fully embraced the new government that had come to power through a violent street coup.

つまり、このクーデターに反対しなかったこと、それどころか、クーデターという、武力によって民主的に選ばれていたヤヌコヴィッチを見捨て、超過激なナショナリスト(ネオナチ)側を支援したことこそ、ウクライナ戦争を招く発端となったと考えられます。この理解なしに、いまのウクライナ戦争は決して理解できません。

 

誠実さに欠けるマスメディア

ところが、この2014年2月21日の出来事について、欧米および日本のマスメディアはずっと誠実に報道してきませんでした。だからこそ、いまさらウクライナ戦争を報道しようとしても、彼らにはそもそもこの問題を伝える資格などまったくないように思えます。とくに、池上彰という人物は人間としてまったく信用のおけない最低な輩であると、わたしは考えています。

2014年2月以降、この問題についてわたし以上に批判的に執拗に論じてきた日本人はいないでしょう。同時に、学者と呼ばれる連中の多くも、この日の問題について目を瞑るだけで、ネグってきたのです。本当に、唾棄すべきどうしようもない奴らばかりが目立っていると思います。こんな連中がいまでもテレビや新聞で、一知半解なディスインフォメーションを流しているというのがいまの日本です。

 

『ウクライナ3.0』の内容

わたしは、2月24日以降、ずっと机の前で勉強に終始してきました。といっても、高知から東京に戻るための引っ越し作業があり、十分な研究ができたわけではありません。それでも、何とか400字換算800枚ほどの『プーチン3.0』を書き上げ、5月末には、ほぼ同じ量の『ウクライナ3.0』の原稿を社会評論社に送る予定です。

 

ここで、『ウクライナ3.0』の目次を紹介しましょう。

 

第一章 ウクライナ戦争は長期化

 1.戦争継続という選択

 2.ゼレンスキー政権の内幕

 3.ロシアはウクライナの東部を併合か

 4.ウクライナ経済

 

第二章 2014年のウクライナ危機以降の内政

 1.ナショナリスト煽動による米国の誤算

 2.オリガルヒ、ポロシェンコの正体

 3.ゼレンスキー政権の誕生と変質

 

第三章 ドンバス和平交渉

 1.ドンバス和平の変遷

 2.2021年のドンバス情勢

 3. なぜ国連平和維持軍を派遣できなかったのか

 

第四章 ウクライナの重大課題

 1.欧州へのガス供給問題

 2.サイバー攻撃

 3.言語問題:国家語とナショナリズム

 4.すさまじいマニピュレーションという現実

 

第五章 ウクライナ戦争の消耗戦化と遠い復興

 1.なぜ戦争を止められないのか

 2.復興をめぐって

 3.結びにかえて

 

『プーチン3.0』も『ウクライナ3.0』も、印税は放棄したものですから、この本を宣伝してみても、わたしの懐にはまったく関係ありません(ついでに書いておくと、わたしは高輪に住んでいるので、ここの資産を考えると、ほとんどまったく働く必要などありません)。それでも、『プーチン3.0』と『ウクライナ3.0』はできるだけ多くの人に読んでほしいと思っています。

理由は簡単です。日本語の媒体や英語の媒体を見ても、ウクライナ戦争の本質にまで鋭く斬り込んだ本はわたしのもの以外にはないからです。自信過剰と批判を受けるかもしれませんが、『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』で、ウクライナ戦争の発端から、この問題について誠実に向き合ってきたのは、少なくとも日本ではわたししかいないのですから、

こうした大言壮語を書いても許されるでしょう。

というわけで、誠実に生きようという意志をもった方々、とくに若者に『ウクライナ3.0』も『プーチン3.0』も読んでもらいたいと思っています。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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