バイデン大統領は「テロリスト」か:ノルドストリーム爆破犯をめぐる報道

日本のマスメディアは予想通り、ピューリッツァー賞の受賞歴のあるジャーナリスト、シーモア・ハーシュが2023年2月8日に公開した、「アメリカはいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか」という長文の記事(https://seymourhersh.substack.com/p/how-america-took-out-the-nord-stream?r=5mz1&utm_campaign=post&utm_medium=web)を無視している。本当に情けない状況にある。

2023年2月10午前7時半ころ、毎日新聞、日本経済新聞、読売新聞、産経新聞のサイトを調べたところでは、いずれもこの情報をネグっている。朝日新聞だけは、ロイター電を公表するという、ややセコイ方法で、この問題を取り上げている。「ロシア、ノルドストリーム爆破の真相解明要求」(https://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN2UJ1N0.html)というかたちの及び腰の記事を転載したのだ。

 

米国のマスメディアもひどい

同じ時点で、「ワシントン・ポスト」も「ニューヨーク・タイムズ」もこの問題をネグっている。米国政府を批判することにつながるだけに、慎重になるのは理解できるが、事実関係くらいはしっかりと報道すべきであろう。何しろ、バイデン大統領がノルドストリーム爆破の主犯だというのだから決して無視すべきではないだろう。

これに対して、「ニューヨーク・ポスト」は、「ピューリッツァー賞受賞者シーモア・ハーシュが、ノルドストリーム2パイプライン爆発の背後に米海軍がいると主張」という記事(https://nypost.com/2023/02/08/seymour-hersh-claims-us-navy-behind-nord-stream-2-pipeline-explosion/)を正々堂々と公開している。その出だしは、「ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストのシーモア・ハーシュ氏は、昨年9月にバルト海の天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を破壊した爆弾をアメリカ海軍のダイバーが設置したと主張し、水曜日に国防総省から否定された」というものだ。事実を淡々と伝える優れた記事になっていると思う。少なくとも、ネグって何も伝えないNYTやWPよりもずっと好感をもつことができる。

 

BBCはNHK並み

ヨーロッパに目を転じると、BBCは日本のNHK並みにひどい。無視を決め込んでいるのだ。これに対して、The Timesは、「米国がNord Streamガスパイプラインを爆撃したと、調査ジャーナリストSeymour Hershが主張している」との記事(https://www.thetimes.co.uk/article/us-bombed-nord-stream-gas-pipelines-claims-investigative-journalist-seymour-hersh-s730dnnfz)を公開している。きわめて潔い明快な記事となっている。

直接、国政に大きくかかわるドイツでは、「シュピーゲル」が記事(https://www.spiegel.de/ausland/russland-duma-sprecher-wjatscheslaw-wolodin-bezeichnet-joe-biden-als-terroristen-a-b5b14034-ec08-47ce-90b1-6810be9c6828)を公表している。

だが、「米国人ジャーナリスト、ノルドストリーム妨害工作の背後に米国をみる」という第一見出しの後に、「論争の的になっている米国のジャーナリスト、シーモア・ハーシュが、裏付けの弱いブログ記事で、米国がノルドストリームのパイプラインを爆破したと書いている。ロシアのプロパガンダは、すでにこの主張を利用している」という歪んだ第二見出しをつけることで、偏見に満ちた報道をしていることに注意しなければならない。さらに、記事中に「ハーシュの信頼性への疑念が高まる」という見出しを立てて、ハーシュを棄損しようとしているのがわかる。どうやら、米国のバイデン大統領にだまされて、ノルドストリーム爆破を契機にロシアからの天然ガス供給をあきらめたドイツは、バイデンにだまされた事実に蓋をして、あくまで「偽善者」バイデンを信じていくそぶりをみせている。

私からみると、「こんなマスメディアだからこそ、ウクライナ戦争の本質について、ドイツ国民の大多数がだまされているのだ」ということになる。

 

ウクライナは予想通り我田引水

ウクライナの報道をみると、予想通り、我田引水の報道をしている。「ホワイトハウスは、米国人ダイバーがノルドストリームを爆破したという情報を「フェイクストーリー」と呼んでいる」といったかたちで報道(https://nv.ua/ukr/world/countries/biliy-dim-vidreaguvav-na-novini-pro-pidriv-pivnichnih-potokiv-vodolazami-z-ssha-ostanni-novini-50302984.html)しているのだ。あくまで、シーモアの主張が間違いであると強調しつつ、それでもシーモアの記事そのものは伝えている。その意味で、日本や米国の主要マスメディアよりはまともな報道といえるかもしれない。

 

勢いづくロシア

ロシアの報道では、「ヴェードモスチ」が「ヴォロディン、バイデンをテロリスト呼ばわりし、ノルドストリームを弱体化させたと非難する」という記事(https://www.vedomosti.ru/politics/news/2023/02/09/962281-volodin-nazval-baidena-terroristom)を公表した。その冒頭には、「米国のジャーナリスト、シーモア・ハーシュが、ノルドストリーム・パイプラインの爆破にワシントンが関与しているとする記事を掲載し、米国大統領ジョー・バイデンがテロリストであることを示唆した」と書かれている。

下院議長のヴャチェスラフ・ヴォロディンはテレグラム(https://t.me/vv_volodin/603)において、「バイデンはテロリストとして歴史に名を刻んでいる」と書いた。さらに、「トルーマンが広島と長崎の民間人に原爆を使った犯罪者なら、バイデンは戦略的パートナーであるドイツ、フランス、オランダのエネルギー・インフラの破壊を命じたテロリストである」とした。

別の「ヴェードモスチ」の記事(https://www.vedomosti.ru/politics/news/2023/02/09/962321-v-kremle-prokommentirovali-rassledovanie-zhurnalista-po-severnim-potokam)では、ドミトリー・ぺスコフ大統領報道官の対応が紹介されている。ぺスコフは、ノルドストリーム爆発事故の調査に関する米国のジャーナリスト、シーモア・ハーシュの記事は西側では広く流布されておらず、驚きを禁じ得ないとのべたという。たしかに、きわめて重要な内容でありながら、不都合な情報を伝えようとしない有力マスメディアが多いのは事実であり、こうした事実がいまのマスメディアの「インチキ」、「不誠実」を物語っているのである。

ロシアがこの記事に国際的な注目を集めるために、たとえば国連内で何らかの行動を起こすかどうかという質問に対して、ペスコフ氏はまず資料を分析する必要があると答えた。「これは結局のところ、ジャーナリスティックな調査であり、一次資料と見なすことはできない」とクレムリン報道官はのべたという。しかし、ペスコフによれば、「非常に重要な資料」であるとのことだ。国際的な調査を加速させるべきだが、逆にこの事件を黙認しようとする動きが見られると大統領報道官はのべたという。

実は、2022年10月初旬、スウェーデンの国家安全保障局(SEPO)は、ノルドストリームに関する調査の終了を発表した。調査団は、「重大な妨害工作の疑いが高まっている」とのべたが、責任者の名前も明かさなかった。その後、調査結果は公表されていない。

2022年12月下旬の記者会見で、プーチンは、ノルドストリーム・パイプラインを損壊した関係者を名指しで批判した。彼によると、ロシアのガスをウクライナ領内だけを通ってヨーロッパに供給することに興味を持った人たちが、ガスパイプラインを爆破したという。プーチンは演説のなかで、ロシア側が爆発現場を一度しか視察できなかったことも強調した。事件に対する本格的な調査は行われていないというのがプーチンの主張だ。

 

Bingを推奨

最後に、余談だが、Bingを推奨する話を書いておきたい。2023年2月10日午前7時45分、11時33分、午後1時40分に、「バイデン大統領はノルドストリームを爆破するように命じたのか」という質問で検索してみた。このサイトの記事「ノルドストリームを爆破させたのはバイデン大統領:ネオコンないしリベラルな覇権主義者の暴挙」(https://www.21cryomakai.com/%E9%9B%91%E6%84%9F/1601/)は、2位、1位、5位の順にランクされていた。

よく知られているように、OpenAIに110億ドル以上を投資しているマイクロソフトは2月7日、同社の検索エンジン「Bing」の新バージョンにChatGPTを組み込んだことを明らかにした。そのおかげで、迅速かつピンポイントで検索結果が得られるようになっている。ゆえに、できるだけ多くの方々にBingをお勧めしたいと思う。

検索エンジンとしては、Yahoo!だけは使わないように強くいっておきたい。今後、検索エンジンの競争がより強まるなかで淘汰されることを願っている。検索結果がひどすぎるのだ。世界の情報について入手したいのであれば、Yahoo!など決して利用してはならない。

グーグルが禁止されている中国でトップの検索エンジンであるバイドゥは、3月に独自のAIを駆使したサービスを開始する予定である。こうしてますますYahoo!を使う人が減ることを願っている。

(Visited 85 times, 1 visits today)

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

このページの先頭へ