COVID-19と陰謀論

COVID-19と陰謀論

ロシアの有名なサイエンスフィクション作家、レオニード・カガノフは2014年にノース・カロライナ大学の研究者らが研究に着手し、2015年11月にその成果が『ネイチャー』に公表された実験(https://www.nature.com/articles/nm.3985)に注目する。それは「広がっているコウモリのコロナウイルスのSARSのようなクラスターは人間にとって潜在的な突然変異を示す」というタイトルの論文で、キクガシラコウモリの個体群に広がっているSARSのようなウイルス、SHC014-CoVの病気を引き起こす可能性を調査したものだった。

カガノフによれば、コウモリだけにみられるSHC014-CoVをSARSウイルスに合体させようとするもので、前者は人間には安全だが、コウモリ間での感染が容易なものであった。後者は人間に有毒で、感染力をもつ。この二つのウイルスの混合体が実験室で生成されたのである。ただし、理論上、自然に出現するだけのきわめて危険なウイルスを特別に生成する必要性はないことから、米国では人間への脅威となるうる感染実験が禁止されたのだという。しかし、これは米国だけの話であった。このプロジェクトに参加していた中国科学アカデミーの武漢ウイルス学研究所の二人(Xing-Yi GeとZhengli-Li Shi)のうち、Zhengli-Li Shi(石正麗)は武漢に戻り、この種の実験を繰り返すことができたという。

問題は、彼女の実験室の安全度が危険な病原体を扱うことが可能な「バイオセーフティレベル4(BSL-4)」ではなく、BSL-3にすぎず、それがここでの生成されたウイルスが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ではないか、との疑惑につながっているというのだ。

彼女は複数の研究者らとともに、2020年2月、『ネイチャー』に「コウモリ起源の可能性がある新型コロナウイルスに関連した肺炎感染爆発」という論文(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7095418/)(この論文に登場する彼女の名前はZheng-Li Shi)を発表できたのも、彼女が何らかの形でSARS-CoV-2にかかわっていたからではないかと疑われている。

 

別のロシアの専門家の意見

これに対して、別のロシアの専門家、アレクサンドル・パンチンの意見(https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10222347845430939&set=a.10203372175731056&type=3)では、実験室でつくられたウイルス、SHC014-MA15とSARS-CoV-2との類似性を調べてみると、SHC014-MA15から抽出されたポリプロテインabのSARS-CoV-2との類似性は86.03%にすぎないし、コウモリのウイルス、RsSHC014からのスパイク・プロテインのSARS-CoV-2との類似性が77.31%に対して、SHC014-MA15は75.88%で、いずれにしてもSARS-CoV-2が武漢ウイルス学研究所由来のSHC014-MA15と同じものであるとは言えないという。

2020年3月に『ネイチャー』に公表された論文「SARS-CoV-2の近位起源」(https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9)でも、「我々の分析は、SARS-CoV-2が実験室でつくらたれたり、あるいは、特定の目的のために操作されたりしたウイルスではないことを明瞭に示している」と指摘している。

 

突然変異の恐ろしさ

紹介した主張のどちらが正しいかの判断は各自に任せることにしよう。筆者は、『ネイチャー』に2017年12月に発表された「中国のコウモリ洞窟に関連づけられたSARS感染爆発」という記事(https://media.nature.com/original/magazine-assets/d41586-017-07766-9/d41586-017-07766-9.pdf)がSARS-CoV-2の出現を物語っていると思う。この記事では、中国の研究者が「致命的な感染爆発が再び出現しうるだろう」と警告していたことがわかる。SARSの活動領域が見つけ出された場所である洞窟は最も近い村からちょうど1キロメートルのところにある。ゆえに、「人々に溢れ出てしまうリスクやSARSに類似する疾病の出現するリスクは起こりうる」ということになる。ウイルスは1週間に1度の頻度で変異するとも言われている。その意味では、SARS-CoV-2がさらに強力なウイルスに変異してしまう可能性は否定できない。

もう一つ、はっきりと指摘しておかなければならないのは、抗ウイルス薬やワクチンがSARSやMERSについて、いま現在も開発されていない事実だ。詳しくは、「新型コロナ 急がれる医薬品開発-抗ウイルス薬やワクチンが、なかなかできないのはなぜ?」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63966?site=nli)を参考にしてほしい。SARSが流行したのが2002年から2003年であったことを考慮すると、抗ウイルス薬やワクチンの開発はきわめて困難であると考えるべきなのだ。しかも、開発には巨額の資金がいる。

日本のバカなマスメディアはこうした困難を明確に報道しない。しかし、事実をしっかりと報道し、そのうえで切迫感をもってCOVID-19に対応することが必要なのだ。

 

最大の問題は専門家の「フェイク」

ここでの記述からわかるように、陰謀論の背後には専門家のもっともらしい研究がある。しかも、その研究成果は必ずしも意見の一致をみるわけではない。ここでは、専門家と称する連中が流す「フェイク」の悪辣さについて紹介しておこう。

その典型が「人為による地球温暖化」という話だろう。この問題については、このサイトですでに何度か指摘している。たとえば、「無知という罪」(https://www.21cryomakai.com/%e9%9b%91%e6%84%9f/638/)では、つぎのように書いておいた。

「「地球温暖化は人間によるものである」という命題をもっともらしく主張してきた元凶は国連の下部機関、「気象変動に関する政府間パネル」(Intergovernmental Panel on Climate Change, IPCC)だ。1988年に国連の世界気象機関(World Meteorological Organization, WMO)と国連環境計画(United Nations Environment Programme, UNEP)によって設立されたもので、国連総会でも承認された。注意すべきことは、この機関は決して科学者によって設立されたものではないことである。ゆえに、IPCCは自ら調査を行うわけではなく、科学者などの調査報告に関する評価をくだす二次機関にすぎない。はっきり言えば、官僚が仕事にありつくための機関であり、地球温暖化による危機を喧伝すればするほど、自らの存在価値を高めることができるのだ。」

同じように、世界保健機関(WHO)の官僚はコロナウイルスについて我々に警告しつづけている。とはいえ、最初、彼らが言っていたSARS-CoV-2のもたらす致死率がいつの間にか大きく変化していることに気づくだろう。あるいは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの死者数予測とWHOの予測は大きく異なっている。

さらに、日本のテレビに登場する「専門家」は日本のSARS-CoV-2検査数の少ないなかで、まったく統計学上、根拠があるとは言えないたわごとをのべている。検査数を意図的に抑制した結果、「隠れ感染者」が急増してきた日本の現実から目を離したまま「専門家」面をされても、不信感が募るだけだ。

 

信頼の重要さ

Dishonest Abe(安倍晋三)が首相である日本では、安倍をだれも信じないだろう。信じる者がいるとすれば、信じる側もまたdishonestなのである。もちろん、公文書さえ改竄・隠蔽する日本の官僚をだれも信じないだろう。信じる者がいるとすれば、彼らもまた官僚並みに不誠実なのだ(よくまじめに働く公務員も多いという話があるが、そうであるならば、声を大にして安倍を批判しろと言いたい)。専門家や学者と呼ばれる連中も信頼に値しない。自らの研究がきわめて不完全でいい加減であることを認めたうえで、よりまともなものにするという姿勢がなければ、真っ当な研究などできるはずがないのである(その意味で、謙虚な姿勢が望まれる)。こうした信じるにたる人々の欠如こそ、大きな問題と言える。そこに、陰謀論がつけ込む余地がある。

「21世紀龍馬」をめざすのであれば、こうした「現実」に目をそむけることなく対峙し、徹底して疑う姿勢を堅持することが望ましい。もちろん、ここでの筆者の論考も疑ってほしい。そのうえで、各自が手探りながら、自分なりに生きてゆくしかないように思われる。ただし、そろそろ明治維新並みの変革が求められているような気がしないでもないが。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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