児童はTikTokを使うな:マスメディアの不勉強を嘆く

「論座」に「TikTok規制議論に欠ける児童のプライバシー保護の視点:日本の法規制は決 定的に遅れている」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020082400003.html)を2020年8月20日アップロードした。そこで論じたのは、「個人情報を盗み取ろうとする動きに対する児童のプライバシー保護という視点」である。

日本では、TikTokは13歳以上を対象としている。TikTokの日本語版をみると、「TikTok は 13 歳以上を対象としています。13 歳未満のお子様には、このアプリを使用させないようにしてください」とはっきりと書いてある。英語版では、「限定アプリ(TikTok for Younger Users)で13歳未満の方に対応している」との説明がある。にもかかわらず、小学生がTikTokを利用し、彼らの情報が本人の知らないうちに盗む取られているという現実がある。

 

驚くべきマスメディアの不勉強

ところが、先日、TBSをみていると、ニュースのなかで、平然と児童だけのTikTok動画を流していた。この児童動画が児童によってアプリを使って撮影された後、アップロードされたかどうかはわからない。親ないし大人がアプリを使って撮影したのかもしれない。

だが、そうであっても、児童だけが登場するTikTok動画を流すのは大いに問題ではないか。これをみた児童が自分でアプリを使って同じような児童同士の動画をTikTokに流しかねないからである。

わたしは日本経済新聞社と朝日新聞社で新聞記者をしていた。ゆえに、いまの新聞記者にも少しでも優れた報道をしてほしいと願っている。しかし、看過できないほど、マヌケで不勉強な記者が増えているように思う。自分がバカであることに気づかないから、勉強をしないのである。

まあ、昔もバカが多かったのは事実だが、のんびりとした時代だったから、彼らは権威主義にすがっていられただけの話だ。たとえば、朝日新聞社の資料室には、The Economistが書架にない。外報部の書架にはある。日本経済新聞社の資料室にはThe Economistが置かれていた。はっきり言って、資料室にThe Economistがない新聞社はマヌケである。知的水準もかなり低いのではないか。わたしの知るこの二つの会社の記者の多くは残念ながら、自分のバカさ加減に気づいていなかった。したがって、わたしからみると「まったくの不勉強であった」と指摘せざるをえない。

わたしはThe Economistを38年間定期購読している。世界の潮流を知るには、きわめて高水準の情報を提供してくれるからだ。というのは、モスクワ特派員当時の1996年12月から1998年2月まで、「西から吹く風」という連載を『経済セミナー』(日本評論社)に掲載していた際、Time、Newsweekなどの英語版雑誌を比較考量しながら記事を書いていたからだ。そのとき痛感したのは、The Economistの知的水準の高さであった。

 

PEPを知らないバカなマスメディア

10月5日付の「論座」では、「PEP規制の重要性:無知ほど怖いものはない」(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020093000005.html)を公表した。つぎのように書いておいた。

「発端は、2020年9月14日、オーストラリアの公共放送、オーストラリア放送協会(ABC)が中国の国有企業「中国振華電子集団」傘下のデータ関連企業がオーストラリアや日本、欧米の政治家や軍事関係者、外交官、企業経営者ら約240万人の個人情報を収集していたと伝えたことである。このことは共同通信が報じている。これをきっかに、日本のTBSは25日、「そのなかには558人の日本人の名前も」あるとして、「安倍前総理や甘利元経産大臣ら国会議員の名前」を具体的に明らかにした。さらに、「個人情報の記載はないが、URLをクリックすると顔写真。一緒に見つかった別のリストには家族や親類の詳しい情報も書かれていた」と伝えている。」

だが、PEPという概念を知っていれば、これが大した問題ではないことがわかる。「振華」側が得ていた情報の多くはオープンソースから得たものであり、一部はそうでないとの情報があるものの、何が問題なのか判然としないのだ。いわゆる「お偉いさん」の家族や友人などの情報まで収集されていたと煽る報道もあるが、PEPの概念を知っていれば、家族や友人の情報を集めることは不正防止の観点からみれば当然ということになる。それを知らないために、議論が錯綜し、論点がぼやけてしまう。マスメディアは自らの無視を知ってか知らずか、対中脅威論や対中警戒論を煽る報道を垂れ流している。それに、無知な学者が加担している。PEPの概念を知りたければ、拙稿を読んでもらいたい。ここでは、この問題をこれ以上論じるつもりはない。

 

低能なフジテレビと出演者

わかってほしいのは、無知で不勉強であるにもかかわらず、自らのバカさ加減に気づかない者が多すぎるという事態の深刻さだ。

最近、フジテレビの情報バラエティー「バイキングMORE」なる番組で、平井文夫という上席解説委員が「だって、この(日本学術会議の)人たち、6年ここで働いたら、そのあと(日本)学士院ってところに行って、年間250万円の年金をもらえるんですよ。死ぬまで」とまったくのでたらめな話をした。こんなバカを上席解説委員にしているフジテレビの知的水準の低さがよくわかるだろう。

あるいは、ジャーナリストなる桜井よしこは、10月14日のBSフジのテレビ番組で、「防衛大の卒業生が大学院に行きたくとも、東大をはじめ各大学は『防衛大から来た、防衛省の人間など入れない』と断っていた」とのべたという。この発言もでっち上げの虚言である。こんなマヌケがテレビに登場し、偉そうなことを言うという場を与えているフジテレビは免許剥奪されても文句は言えまい。

わたしも2015年3月17日に、彼女と同じ「プライムニュース」という番組に出演したが、それはわたしのことをよく知る人物の推挙によって実現した。つまり、フジテレビが不勉強だから、外部の人物に「適切な人物」を推薦してもらったのだ。同じように、信頼できる人物に頼んで、できるだけ「まともな人」を登場させることが肝要だろう。そのためには、フジテレビの社員自らがよく勉強し、信頼できる人物を適切に峻別できるだけの能力を育まなければなるまい。

 

学生も「もっと勉強しろ」

まったく同じことを学生にも言いたい。自分がバカであることを自覚し、そのバカさ加減を少しでも改めるために、もっと勉強してほしい。心からそう願っている。

マヌケでバカなフジテレビのようなマスメディアは猛省し、だれが本当に優れているのかを見抜けるだけの社員を育てることが必要だろう。それができないのなら、外部から優れた人材を求め、教えてもらうしかあるまい。遠藤周作なら、そのくらいのことはできるかもしれないが、その息子にそんな度量があるとは思えないが。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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