国連の「人道的停戦」決議にみる覇権国アメリカのひどさ

国連総会は10月27日、ガザ危機に関する重要決議を採択し、「敵対行為の停止につながる、即時かつ持続的な人道的停戦」を呼びかけた。賛成120、反対14、棄権45であったが、米国やイスラエルは反対、フランス、ロシアや中国は賛成、英国、ドイツ、日本、ウクライナは棄権した。

この結果をみて痛感するのは、米国という覇権国の身勝手さとユダヤ人の強靭さである。あるいは、ドイツや日本が米国の腰巾着に甘んじている「現実」である。

 

ユダヤ人を気遣うロシア

同じ日、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ガザで拘束されている人質の運命について交渉するため、10月26日にモスクワを訪れたイスラム過激派パレスチナ組織ハマスの代表は、クレムリンとは接触していないと語ったという。

ロシア外務省は声明で、「ガザ地区で拘束されている外国人人質の即時解放に関するロシアの路線を継続するため」と、同団体の政治局メンバーであるアブ・マルズーク氏率いるハマス代表団がロシア外務省の代表と会談したとした。また、アブ・マルズークとは、イスラエル軍によって封鎖され、砲撃や空爆を受けているガザ地区からのロシア人やその他の外国人の避難の確保に関する問題についても話し合われた。

だが、10月26日夜遅く、ハマスのロシア首都訪問は、イスラエル外務省の極めて鋭く無礼な反応を引き起こしたという。イスラエル外務省はこれを「テロを支援する卑猥な行為」と呼び、ロシア当局に同グループの代表を自国領土から「直ちに追放」するよう求めたといのだ。傍若無人なイスラエル外務省の態度に唖然とする。

この態度は、ウクライナ政府と似ていないか。イスラエルもウクライナも、ジョー・バイデン政権からの支援を取り付けており、それを錦の御旗にして、傍若無人にふるまっているようにみえる。そんなウクライナだからこそ、人道的停戦に賛成することさえしない。

 

ユダヤ人の力

私は、ユダヤ人の力を恐れている。拙著『知られざる地政学』〈上巻〉の第5章「覇権国アメリカの煽動とエスタブリッシュメントの正体」において、ユダヤ人問題を取り上げたのもこのためである。ユダヤ人といっても、米国に住むユダヤ人の多くはすでに「アメリカ化」している。それでも、母国イスラエルが攻撃されれば、イスラエル支援に傾くのは当然だろう。

だが、イスラエル建国がこの問題の根っこにあることは間違いない。といっても、私自身はいま、別のことを考えている。それは、「人種差別」とキリスト教文明とのかかわりという問題だ。

奴隷を介して人種差別が拡大したとすれば、人種差別は奴隷問題でもある。ただし、奴隷は英国や米国といった国だけの問題ではない。

 

人種と啓蒙思想

いま、「人種をめぐる地政学」という論考をまとめようとしている。そんな私にとって、啓蒙主義という理性優先の思想がなぜ「人種」という「区別」を持ち込んでしまったのか、あるいは、キリスト教文明に潜む選民思想というユダヤ教的発想が文明国と野蛮国という「区別」をもたらした機制のようなものが関心事となっている。

こんなことを考えているから、10月27日の国連決議の結果にも興味をもった次第である。いま関心のある問題については、近く論考を仕上げることにしたいと考えている。

 

 

 

 

 

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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