『アメリカなんかぶっ飛ばせ』

しばらくサボっていた理由は、『アメリカなんかぶっ飛ばせ』(仮題)を執筆していたからである。原稿はほぼ完成した。ここでは、執筆の証拠として、「まえがき」部分を公開しておこう。

 

 

 

 

まえがき

 

 今後、『アメリカなんかぶっ飛ばせ』、『民主主義なんかぶっ飛ばせ』といった一連の作品を上梓しようと考えている。いずれも、多くの人が意外に感じるかもしれない内容を紹介することで、自分の信じたいことだけを認めようとする「確証バイアス」に侵されている脳みそに刺激を与えたいと思ったからである。

 その第一弾として、あまり聞かれなくなった「反米」を声高に叫ぶための本を書くことにした。合意に基づく世界統治を行っているヘゲモニー国家アメリカは、その世界統治のために世界中で身勝手な行動をとっているにもかかわらず、アメリカの影響下にある欧州諸国や日本の指導者だけでなく、それらの国々の大多数の政治家、官僚、学者もアメリカを真正面から批判しようとしない。不偏不党をかこつマスメディアもまた沈黙や無視によって、アメリカの横暴に見て見ぬふりをしている。

 こんな想いを強くもつようになったきっかけは、ウクライナ戦争であった。二〇二二年二月二四日にウクライナへの侵略を開始したロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領を蛇蝎のごとく非難し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領への同情が急速に広がった。しかし、この見方は、本当は、ヘゲモニー国家アメリカを擁護するための偏った見方にすぎない。戦争が勃発する前の段階で、ウクライナにおいてどんな出来事があったかについて考えたこともないような人々はただ、アメリカ政府や同政府と結託するマスメディアの流す偏った見方にだまされているだけなのである。そして、反ロシア的な見方が多くの人々をヘゲモニー国家アメリカの「悪」を隠蔽し、だます結果をもたらしている。そして、多額の各国の税金が「ウクライナ支援」という美名のもとに投じられ、多くの軍産複合体が潤う。

 残念ながら、悲惨な戦闘シーンを見せられると、人間は多数の死傷者を出している側に同情を禁じ得ない。ウクライナへの同情は、動画によって多くの人々の心揺さぶる。二〇二三年一〇月七日以降、パレスチナのガザ地区での戦闘が広がると、今度はイスラエルの過剰防衛と、死傷するパレスチナの子どもの姿に心を痛めざるをえなくなる。しかし、そんなイスラエルをアメリカが支援しているにもかかわらず、形ばかりのアメリカの人道支援のふりに多くの人々がだまされているように映る。二〇〇万人もの人々を飢餓の危機に置きながら、民間人を殺害しつづけるベンヤミン・ネタニヤフ政権を支援するアメリカのジョー・バイデン政権はネタニヤフとアドルフ・ヒトラーとの違いを説明できるのか。

 こうした世界の出来事の背後にまで目を凝らすと、そこにはヘゲモニー国家アメリカの身勝手な影が見えてくる。本書はヘゲモニー(覇権)を維持するためにアメリカという国家がとってきた狡猾な戦略について糾弾することを目的としている。アメリカに追従するばかりでいては、きっと日本もアメリカと敵対する勢力との戦争に巻き込まれかねない。だからこそ、アメリカを批判し、アメリカと距離を保つ必要性があることを少しでも多くの人に理解してほしいのだ。

 本書はまず、第一章において、ウクライナ戦争にかかわるアメリカを厳しく批判する。「ウクライナ支援」という名前を大義名分としながら、実は「アメリカ国内への投資」に血道をあげているジョー・バイデン大統領政権について解説し、ウクライナ政府の陰で暗躍してきたアメリカについて俎上にあげる。ウクライナ戦争の停止を阻んでいるのはアメリカの好戦姿勢であり、それに乗じたウクライナの一部の過激なナショナリストたちだ。

 国際法を恣意的に解釈することで、まったく身勝手な世界支配につなげてきたヘゲモニー国家アメリカの姿を第二章で語りたい。具体的にいまアメリカがやろうとしているのは、ロシアの公的資産を盗むことである。ロシア中央銀行が海外に預けている資産を凍結するだけでなく、押収・没収して、ウクライナへの支援に活用しようとしている。こんな身勝手な行動が国際法上、許されるかどうかについては大きな議論がある。それでも、アメリカは自国の都合を優先しようとしている。

 ドナルド・トランプ政権は二〇一九年一一月、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱を国連に正式通告した。これに対して、ジョー・バイデン政権は二〇二一年一月、パリ協定への復帰を決定、国連に通知し、通知から三〇日経過後の二月一九日に正式に復帰が認められた。この出来事から、バイデン政権が環境保護派に理解を示しているようにみえてくる。だが、バイデンは決して環境保護一辺倒の政治家ではない。むしろ、あくまで自らの権力奪取・維持のために場当たり的な政策をとっているにすぎない。そこで、第三章では、ヘゲモニー国家アメリカのまったく身勝手なエネルギー政策について論じたい。

 第四章は、ヘゲモニー国家アメリカの思想的背景について論じる。やや哲学的な話を展開することになるが、この部分を読まなければ、アメリカの唯我独尊的なふるまいを理解することはできないだろう。結論からいえば、科学を神の近くに祭り上げ、その科学を操ることで、そして、科学の生み出したテクノロジー(科学技術)を安全性の保証のないままに世界中に広げてその影響力を維持・拡大している。それがアメリカだ。しかも、「法の上に人を置く」というホッブズ的な社会契約を前提とする英米法を前提に、特権化したテクノロジーを大統領が政治利用することで、神の後光を背に外交を展開している。

 アメリカは、神に近接した「テクノロジーの上に人を置く」という構図によって、「法」と「テクノロジー」による世界支配を実現しているのだ。この結果、世界中に害悪を撒き散らしていても、何の反省もないまま、ヘゲモニー国家として君臨しつづけることができる。まさに、神との盟約のもとに、戦争大好きな外交によってねじ伏せる行動をとりつづけることが可能となっている。ヘゲモニー国家アメリカをぶっ飛ばすためには、この「法」と「テクノロジー」の上に立つ人、アメリカ大統領の権力基盤を突き崩す必要がある。その一歩として求められているのは、とにかく、こうした権力のあり方に気づくことだ。

 

 このように、本書はヘゲモニー国家アメリカを徹底的に批判するために書かれたものである。だからといって、中国やロシアを擁護しているわけではない。日頃、批判の対象となっていないアメリカをあえて批判することで、信じたいことを何となく正しいことのように誤解させる「確証バイアス」に自らが侵されていることに気づいてもらいたいのだ。人間の判断は心理的な影響で多くのバイアスに直面する。その「嘘」に気づくことで、より真っ当な判断に近づくことができると信じているからである。

 

 

 

 

まえがき

 

 

第一章 ウクライナ戦争を長引かせるアメリカ

  1.バイデン物語

  2.ウクライナ物語

  3.大統領再選のための戦争長期化

 

第二章 国際法を歪めるヘゲモニー国家アメリカ

  1.国際法の変遷とアメリカ支配

  2.ロシアの公的資産を盗もうとするバイデン政権

  3.アメリカの外交戦略

 

第三章 ヘゲモニー国家アメリカの身勝手なエネルギー政策

  1.ガソリンの単位ガロンに込められた唯我独尊

  2.石油・ガスをめぐるヘゲモニー戦略

  3.ガスパイプラインとLNGの物語

 

第四章 科学を背にしたヘゲモニー国家アメリカ

  1.アメリカの新自由主義

  2.「法の支配」の怖さ

  3.「テクノロジーの支配」:科学の宗教化からテクノロジーの政治化へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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