The Economistの必読記事:Sex work in the gig economy

今週、読んだ数多くの記事や論文のなかで、もっとも勉強になったのは、The Economistが報じた「Sex work in the gig economy」という記事である。私は、「現実」を読み解くという観点から、性に関する知見を長く重視する姿勢を貫いている。

たとえば、「論座」に私がはじめて投稿した記事のタイトルは、「中国で「サイバーセックス」の奴隷になる脱北女性 罠にはめられた女性たち。サイバー空間で広がる現代版セックス・スレイヴズを直視せよ」(2019年9月26日)というものだった。満を持して書いた記事の重みをわかってほしい。

 

「北欧モデル」

こんな私からみると、記事の出だしは知らないことばかりであり、好奇心をくすぐられた。まず、1971年にデンマークにつづいてスウェーデンはあらゆる形態のポルノを合法化したことが紹介されている。そのうえで、スウェーデンは、買春については慎重で、1999年になって、「セックスの購入は犯罪とするが、販売は犯罪としない」という、いわゆる「北欧モデル」を導入したことが書かれている。その後、このモデルは広く普及し、「過去10年間で、フランス、アイルランド、イスラエル、アメリカのメイン州がこのモデルを採用し、スコットランドも検討中である」と記されている。

そのうえで、つぎのようなニュースが報じられている。

「7月1日、スウェーデンの新しい法律が施行され、アダルトコンテンツで有名なOnlyFansのようなサイトでのライブポルノへの支払いが犯罪となるが、オンラインでの性行為を行う者は犯罪とならない。この新法を破った者は、最高1年の懲役刑に処せられる。」

 

「北欧モデル」のスティグマ

話はこれで終わりではない。The Economistの記事は、この新法の指向が相変わらず、弱い立場の女性を保護しながら需要を減らすことを意図している点を問題視している。記事が指摘しているように、「旧来の売春に関する北欧モデルの支持者は、セックスの購入は常に搾取的であり、弱者を保護するだけでなく、需要を潰すためにも規制が必要だと主張している」ようにみえる。つまり、「風俗嬢が自分の身体に対する主体性をもつことを否定している」ように映る。

ゆえに、記事は、「北欧モデルには、スティグマと主体性の否定が根強く残っている」と指摘している。ここで、「スティグマ」とは、「偏見」ないし「差別」を意味している。さらに、記事は、「このモデルは、売春婦の多くが自由な選択ではなく、幼少期の虐待や貧困が原因でセックスワークに手を染め、「更生」させるべきだという考えに基づいている」とものべている。要するに、「古い」というのである。

 

職業差別

私がこの記事を読んでいて念頭に浮かべたのは、6月16日に日本の最高裁第一小法廷(宮川美津子裁判長)がくだした判決の「アホさ加減」であった。新型コロナ対策の給付金の支給対象から性風俗業を除外したのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反するとして、関西地方のデリバリーヘルス(無店舗の派遣型風俗店)運営会社が、国などに未払いの給付金などの支払いを求めた訴訟の上告審で、除外を合憲として会社側の上告を棄却する判決を言い渡したのである。

先のThe Economistの記事は、2022年、ベルギーがヨーロッパで初めてセックスワークを完全に非犯罪化した国となったことも紹介されている(世界的にはニュージーランドに次いで2番目)。2024年12月には、セックスワーカーに正式な労働権を認め、病気休暇、出産手当金、年金を受給できるようにし、売春宿には許可証の取得と安全衛生基準の遵守を義務づけた。「ここ数年、オーストラリアのビクトリア州とクイーンズランド州はセックスワークを非犯罪化し、南アフリカとタイも同様の法案を起草している」ことも紹介されている。

 

COVID-19による大きな変化

記事には、COVID-19に関連して、ベルギーで働いていた売春婦の興味深い話が出てくる。ベルギー政府は売春宿でのマスク、使い捨てシーツ、二酸化炭素測定器の使用を義務づけたとき、それこそがセックスワーカーの正式な承認への第一歩となったというのである。さらに、南アフリカでは、性を売る人々への同情が高まり、政府は2022年に売春を非犯罪化する法案を提出したという。2023年、コスタリカはセックスワークを労働として認めた。セックスワーカーには税コードが与えられ、現在は付加価値税を支払っているという。

こうした世界的な変化を知っていれば、日本の最高裁の判決が時代錯誤なのではないかとの疑念が生まれる。この潮流を「是」と考えれば、「新型コロナ対策の給付金の支給対象から性風俗業を除外したのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反する」とみなすべきだろう。完全な非犯罪化はスティグマを減らし、警察の嫌がらせを抑止し、意思のある者と強制される者を分けるのに役立つという議論もしないまま、昔に制定された法律に従うだけでは、時代の変化に適時に対応できないのではないか。

少なくとも、こうした議論をマスメディアがきちんと紹介し、幅広く国民に知らせることは必要なのではないか。

こんな風に感じる私は、またしても日本のオールドメディアの「バカさ加減」にあきれざるをえない。私がこのサイトでわずかばかりの情報発信をしている最大の理由は、まさにここにある。要するに、オールドメディアは不勉強であり、こいつらに任せていては、戦争になりかねないというわけだ。

バカがバカを生み出す再生産構造がいまの日本には広がっている。何とかしなければならないと心から感じている。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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