勤労統計の不正調査問題

勤労統計の不正調査問題

 

勤労統計の不正調査問題について、『なぜ「官僚」は腐敗するのか』の著者として論じておきたいと思います。

まず、2019年1月30日の時点で、この問題についてもっとも的確に考察しているのは上西充子の書いた「勤労統計の不正調査問題、特別監察委員は果たして実際にヒアリングを行ったのか?」という考察であると思います。ぜひhttps://hbol.jp/184464にアクセスしてみてください。

 

定塚由美子という官僚

わたしがここで取り上げたいのは、嘘をつく官僚についてです。厚生労働省の定塚由美子官房長は繰り返し虚偽答弁を行っています。もっとも唖然とするのは、1月24日の衆院厚労委において、定塚が「監察委員会の先生方とご相談をしまして、局長、課長については大変責任が重いということで、これは必ず委員の方にヒアリングをしていただくということにしたわけでございます。したがいまして、局長、課長、合計20名の方には委員の方に必ず加わっていただいております。」と発言したことです。この発言が真っ赤な嘘であったことがその後明らかになります。

上西が指摘しているように、この定塚は国会の場で虚偽答弁を繰り返しています。つまり、国民に対して嘘をつきまくっているのです。

定塚は森友・加計問題のときの佐川宣寿財務省理財局長と同じですね。この事件は公文書改竄という法律違反がありながらうやむやになってしまいましたが、今回もまた統計法違反という法律違反を犯しておきながら、虚偽答弁を国会の場で官僚が繰り返しています。国民に平然と嘘をつきつづけているわけです。

まず国会の場で定塚の虚偽答弁について冷静に究明することが必要でしょう。なによりも大切なことは、本人に虚偽答弁をしたという自覚をもたせることです。国民に嘘をつくに等しい行為をしたことについて事実関係を認めさせなければ議論がはじまりません。「勘違い」とか、「誤解」といった理由をのべるかもしれませんが、ともかく嘘をついたという事実をはっきりと認めさせなければなりません。

そのうえで、なぜそうした事態に至ったのかを本人の口からはっきりと説明させなければなりません。なぜ国会の場で嘘をついたかをじっくりと徹底的に追及するのです。公務員はDishonest Abeたる安倍晋三に仕えているわけではありません。国民全体の奉仕者であるべきなのですから、嘘をついた動機について徹底的に追及すべきなのです。勘違いというのなら、その勘違いがなぜ生じたのかを本人に言わせるべきです。その答弁自体が虚偽答弁である可能性が高いですから、その発言についても徹底して真偽をたしかめなければなりません。

このサイトでは、「ディスインフォメーション」について何度も取り上げました。定塚は「意図的で不正確な情報」であるディスインフォメーションを国会の場で何度も流してきました。Dishonest Abeとまったく同じです。罪深い安倍晋三ですが、同じことが定塚についても言えます。

他方で、国会における虚偽答弁について政治家および官僚に明確な罰則を設けることが必要だと思います。証人喚問での偽証は刑事罰に相当するわけですが、国会での虚偽答弁については特別の機関での審議対象とし、虚偽答弁を行った者は政治家であれ、官僚であれ、その事実を公表し、責任を問う仕組みを構築すべきでしょう。政治家であれば、政党助成金対象者からはずすとか、官報に虚偽答弁者として記載し、歴史にとどめるといった措置が必要でしょう。官僚であれば、国家公務員法違反で懲戒免職を含めた罰則を明確化すべきです。

定塚の例で言えば、まだこうした明確な制度がないわけですから、幹部公務員を所管する内閣人事局が定塚の虚偽答弁をどうみるかについて問いただす必要があります。国会答弁で嘘をつく公務員をどう処罰するかを内閣人事局に問うのです。例によって意図的か、勘違いかによって処罰を変えるといった議論があるかもしれませんが、いずれにしても虚偽答弁をさせないための法的枠組み、人事上の仕組みといったものを早急に整備しなければなりません。

 

官僚による法律違反

だれによる法律違反であっても、法律にしたがって粛々と処罰すべきです。基幹統計すべてについて、法律違反かどうかを検察はしっかりと捜査すべきでしょう。国会での審議とは別に検察が捜査するのが当然です。法律違反をしたことがわかっていながら、それを看過したことで森友・加計事件の教訓がまったくいかされていません。その結果、司法による行政へのチェックがなされていないのです。

Dishonestな安倍晋三は、口では「法の支配」(rule of law)を説きながら、足元に仕える公務員による脱法行為にまったく危機感をもっていない。独裁者は法に規制されないわけですが、官僚が法を守らなくても自分のために働いているかぎり問題にしないというのがDishonest Abeのやり方ですね。

統計法違反を最初に命令した官僚を起訴して裁判にかけるだけではなく、その違反を継続しつづけてきた公務員も処罰しなければなりません。真実を語ってもらうために、例の「司法取引」でどんどん真実を暴露してもらうしかないでしょう。安倍晋三は「法の支配」を強調してきた以上、法律違反した者を厳格に逮捕・起訴するように命令すべきでしょう。

すでにこのサイト(2019年1月2日のラジオ用原稿)で紹介したことですが、フランスに現にある犯罪訴訟法典第40条を日本でも制定すべきです。それは、フランスの公務員は重罪であれ通常犯罪であれ検察当局に迅速な報告が義務づけられるというものです。統計法違反をしながら、それに目を瞑り、唯々諾々としている公務員が刑罰の対象とするのです。

これだけでは公務員が委縮する恐れがありますから、公務員を内部通報者保護法の適用対象とすることも必要でしょう。エドワード・スノーデンのように、国家が国民のプライバシーを侵害しているような事例があれば、どんどんホイッスルを吹いてもらえばいいのです。そして、そうしてくれたホイッスル・ブローアーは保護されなければなりません。

国家は嘘をつくというのが歴史の教えですから、その嘘を少しでも早く暴くことができるような仕組みを設けることが当然なのです。

 

御用学者樋口美雄

特別監察委員会の委員長、樋口美雄は御用学者の典型です。かれの肩書は労働政策研究・研修機構理事長というわけですから、まさに以前の労働省の「手先」として学問をビジネスとしてきた人物と言えるでしょう。

実は、わたしはこの樋口と一度だけ接点をもったことがあります。かれは1993年に日本評論社から『プロ野球の経済学』を上梓しました。この本をAERAという雑誌で取り上げたことがあります。当時、わたしは朝日新聞社でAERAの編集部員でした。このとき、強く感じたのはプロ野球をビジネスの視点から斬るというアイデアの新しさでした。

こんな本を四半世紀以上も前に書ける人ですから、学者という職業をビジネスとみなし、そこでどう振舞えばカネになるかをもくろむのは簡単なことでしょう。旧労働省や旧大蔵省の役人にこびへつらってパイプをつくり、それを実績にビジネスに精を出すことでカネがしこたま儲かるのです。

わたしの知る限り、人文科学や社会科学といったわけのわからない似非サイエンスを専門にしている多くの者がビジネスとして学問をやっている気がしてなりません。ある組織に入っているからという理由で、その組織のイデオロギーに傾き、真理に迫るといった姿勢をまったく放棄してしまっている輩がそこら中にいます。「魂」をカネに売ったような連中もたくさんいます。

学会といっても、ビジネスとして学問をやっている連中はたとえばわたしのような者を目の敵にしている。大した研究もしていないバカが偉そうにしているので、実名をあげて批判すると、それを無視したり、研究発表の場を潰そうとしたりもする。まあ、ビジネスの世界では当たり前のことですけれど。少なくとも真理の探究などいった高尚なレベルで学術研究がなされていると思ってはいけません。その結果、似非学問がはびこっているわけです(そのうち、実名を挙げて、いかにひどいかを本にしようと思っています)。

官僚におもねることで、虎の威を借りて学者としても偉そうにしている連中も実に多い。その実、大した本も論文も書いたことがない。にもかかわらず、賞を得たりできるのも、こうした権威づけをして無能を隠しつづけることが可能なメカニズムが日本に出来上がってしまっているからです。

樋口のような御用学者が厚生労働省の意向を無視して調査などできるはずがありません。かれもビジネスで学者をしているのですから、クライアントの意向を最優先するのが当たり前なのです。

 

21世紀龍馬」へ

勤労統計の不正調査問題は日本の「悪」の縮図です。どうか、その問題点をよく見極めて、少しでも良い社会にするにはどうしたらいいのかを考える努力をしてほしいと思います。「21世紀龍馬」への心からのお願いです。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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