ロシア人ジャーナリストの拘束・逮捕で思うこと:Dishonest Abeへの警戒

ロシア人ジャーナリストの拘束・逮捕で思うこと:Dishonest Abeへの警戒

 

6月10日、ロシアの有力紙『ヴェードモスチ』、『コメルサント』、『RBK-daily』の3紙は共同声明を各紙面上で大々的に展開し、6日に麻薬密売などの疑いで拘束、その後、自宅軟禁状態に置かれたイワン・ゴルノフ記者に対する当局の捜査・逮捕などに透明性を確保するように強く求めた。

ゴルノフはロシアの「暗部」を調査報道してきたジャーナリストであり、その活動に対して、当局がいらだっていたことは間違いない。たとえば、モスクワに住むアパートの住民がマイクロファイナンス機関と呼ばれる「闇金」に騙され、約500もののアパートが略奪されてきた実態をレポートしたり、埋葬ビジネスの暗部を暴露したりする記事を書いてきた。これらの調査報道によって、ロシアのプーチン政権下での政治家・公務員との癒着や、それに「マフィア」が絡む、なまなましい腐敗の構造の一端を知ることができる。だからこそ、当局はゴルノフに圧力をかける必要が生まれたわけだ。

現に、彼は仕組まれた事件で拘束され、警官から暴力を受け、それを認定しない医師に囲まれてかつて拘置所で死んだ(殺された)セルゲイ・マグニツキーを思い起こさせる状況に追い込まれている。

残念ながらプーチンが直接手を下している証拠はない。しかし、プーチンに近い人物がこうした「弾圧」を行っていることは間違いないだろう。ゴルノフの報道がそれだけ「真実」を突いてきたからこそ、権力者も無視できなかったのだ。

 

治安維持機関、法執行機関の分析こそ国家分析の基礎

私は、常々、近代国家たる主権国家の分析の基礎に治安維持機関や法執行機関の分析がなければならないと主張している。政治学者なる人々は、ついつい政治的イデオロギーや政策を重視しがちなようだが、本当に重要なのは人間を逮捕したり、拘束したり、罰したりする「合法的暴力装置」にかかわる権力基盤だ。

たとえば、日本で言えば、児玉誉士夫の戦後政治に果たしてきた役割、政治家や右翼あるいは暴力団とのかかわりを知らなければ、日本という主権国家の本当の「かたち」は理解できない。いま、真山仁は『週刊文春』で、「ロッキード 角栄はなぜ葬られたのか」を連載しているが、2019年6月6日号の134頁にある最後の2段落はきわめて重要だ。

「児玉-CIA-ロッキードというトライアングルが、戦後20年以上、日本で猛威を振るったとするならば、ロッキード事件の本質は、従来の〝定説〟と全く異なるものであったことは明らかだ。

すなわち、一軍事企業の長年にわたる賄賂工作事件ではなく、日米安全保障条約の裏面史の断片を白日の下にさらけ出した端緒とみるべきなのだ。」

この主張は正しい。この暗部には、Dishonest Abeの母方の祖父、岸信介も登場する。政治をビジネスにしてきた連中はいまでもこの構造のなかで政治を行っているのではないか、と大いに疑う必要がある。

真山には、『売国』という小説がある。拙著『ウクライナ・ゲート』の註に、つぎのようなことを書いたことがある。

「週刊文春に連載されていた真山仁の小説『売国』が7月末に完結した。日本の政治家、官僚、マスコミ関係者に「売国奴」がいるといった話が出てくる。米国政府の手先となって、米国に有利な情報を流すことで自分も利益にあずかろうとする輩である。テレビに出てくるコメンテーターの類の多くは「売国奴」と疑ってかかる必要がある。かつては、ソ連に通じた「売国奴」もいたが、最近では、米国の手先ばかりが目立つ。」

実は、こうした視点が日本の政治分析では不十分なのだ。もちろん、私は陰謀論に与する者ではない。ただ、イデオロギーや政策ばかりを論じても、決して「現実」を説明することにはつながらないと思っている。それは、ソ連やロシアの歴史を見れば一目瞭然なのだが、残念ながら、ソ連やロシアについてはイデオロギーに傾いた偏見がいまでも支配的だ。その結果、「現実」を説明できない空論ばかりが目につく。そのため、いまのロシアの「現実」にいつまでたっても迫れない分析がほとんどなのである。

 

「裁かれるは善人のみ」

今回の事件で思い起こされるのは、「リヴァイアサン」(Leviathan)という原題を「裁かれるは善人のみ」と日本語訳した、アンドレイ・ズヴャギンツェフ監督による2014年のロシア映画である。この脚本はカンヌ国際映画祭脚本賞に輝いている。フィクションゆえに逆に「現実」をよく照らし出しているようにみえるこの作品では、怪物リヴァイアサン、すなわち「可死の神」(deus mortalis, mortal God)が国家の魂の部分、主権国家ロシアを象徴している。そのリヴァイアサンは大自然のもとで神の化身のように振る舞いながらちっぽけな人に襲い掛かる。それは、市長と警察、検察、裁判所などの「共謀ネットワーク」がロシアの隅々まで行き渡っていることを教えている。ゆえに「裁かれない」のだ。

逆に、「裁かれるは」、ゴルノフのような「善人のみ」なのである。そして、多くの人々は無関心を装い、リヴァイアサンたるプーチンおよびその取り巻きを中心とする独裁・横暴を座視している。

 

安倍・菅ラインの怖さ

いまの日本は着実に「ロシア化」しつつある。政治家が治安維持機関や法執行機関に「手を突っ込み」、「共謀ネットワーク化」しつつある。他方で、国会会期中であるにもかかわらず、予算委員会を開催しない異常事態を放置し、民主主義さえ蔑ろにしている。

いまの日本は、「裁かれないのは悪人のみ」程度の状況だが(東芝の経営者や甘利明を想起せよ)、いずれロシアと同じように、政権にとって目の上のたん瘤と言える特定の人物をねらった拘束・逮捕が必ず起きるだろう。まさに、「裁かれるは善人のみ」という状況になるに違いない。日産のゴーン逮捕は外国人を狙い撃ちにした検察(たぶん政治家も関係しているはずだ)のせこい動きだが、つぎにねらわれるのは日本人になるはずだ。

こんな状況を打破するには、「ラディカルな無関心」に揺さぶりをかけることが望まれる。私が「21世紀龍馬会」なる組織を運営しているのもそのためのわずかな一歩だ。どうか、ロシアのようなひどい国にならないためにも、いまの政権のひどさに気づいてほしい。とくに、学生はDishonest Abe、すなわち、安倍晋三と菅義偉官房長官がいかにひどい政治家であるかについて、よく考えてほしい。彼らよりも、その志において山本太郎のほうがずっとまともだ。もっとも「れいわ新選組」というのは、いただけないが。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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