ユーリャ・ラティニナの発言に思う現実主義
1月12日、イズベスチヤは、ジャーナリストのユーリャ・ラティニナ(ロシア法務省により外国人諜報員[エージェント]の登録に含まれる)は、自身のYouTubeチャンネルの放送で、ウクライナ紛争問題におけるロシアのプーチン大統領の正しさを認めた、と報じた。
彼女は、私がもっとも尊敬するロシア人ジャーナリストである。訪ロする度に取材するように努めてきた。ウラジーミル・プーチン大統領を厳しく批判してきた彼女は、2022年9月9日に法務省が更新した同省のウェブサイトの外国エージェント・リストにおいて、歴史家のタマラ・エイデルマンなどとともに、個人リストに追加された。
そんな彼女の発言だけに重みがある。「ロシアのリベラルなマスコミは、何十年もの間、私に嘘をついてきた」と彼女はのべ、2022年までに形成された「世界像」はフェイクに基づくものであり、ロシア大統領のテーゼは真実であると結論づけたという。
別の報道(lenta.ruやgazeta.ru)によると、ラティニナは、後にドンバス情勢に関する調査から、マイダンでの銃撃事件は右翼過激派によって起こされたこと、ヴィクトリア・ヌーランド 元米国務長官が2014年にウクライナの責任者を誰にするか話し合ったことを知った、と強調した。
「私たちが2022年に描いた全体像は、穴だらけのキャンバスに偽の色で描かれたものだと私は理解している。そして、プーチンの持論の多くは、より現実に即していた」と彼女は結論づけたのだ。
「覚醒したマインド・ウィルス」批判
ラティニナの批判の矛先は明らかに「ノーヴァヤガゼータ・ヨーロッパ」といったリベラル系メディアにも向かっている。実は、彼女は2024年12月26日付で同サイトに、「ゼレンスキーが前線の厳しい状況にもかかわらず、エスカレーションに踏み切っていることについて」という記事をアップロードした。そのなかで、「プーチンは確かに上記のように、つまり極めて理性的に振る舞っているが、一方でゼレンスキー大統領の行動は驚くべきものだ。ロシア領内のATACMS、キリロフ将軍の暗殺、カザンの高層ビルへの無人偵察機など、どんな口実でも状況をエスカレートさせようとしている」と指摘している。
さらに、つぎの記述は刮目に値する。
「ロシアは独裁国家だ。反体制派は逮捕され、異論は罰せられ、ウクライナの戦争捕虜はひどく非人道的な扱いを受けている。しかし、ゼレンスキー政権下のウクライナは、失敗国家(failed state)と化してしまった。「存亡をかけた戦争」の最中に要塞を建設できないのは、失敗国家である。前線で戦う兵士と同じ数の脱走兵がいるのも、失敗国家である。」
こうした彼女の厳しい批判は、2025年1月13日付の記事につながっている。この「ノーヴァヤガゼータ・ヨーロッパ」に掲載された最後の記事において、彼女は「覚醒したマインド・ウィルス」を批判した。おそらく、本当の「現実」を描き出した彼女は、「覚醒したマインド・ウィルス」をもつ、悪辣な連中からパージされたに違いない。
彼らのおぞましさはこの記事を読めばよくわかる。だからこそ、この記事については、拙著『ネオ・トランプ革命の深層』の311頁、353~354頁に紹介しておいた。どうか、かみしめながら熟読してほしい。
現実主義の厳しさ
だが、彼女の研ぎ澄まされた現実主義的考察を実践できる人が世界中にほとんどいない。多くは「現実」を歪めて偏向した視角からしかみていない。それが「現実」なのだ。そんな思いから、「知られざる地政学」の連載では、イランの考察を延期して、現実主義の観点から台湾問題について書いておこうと考えている。
日本の衆議院選挙の前に、高市早苗首相の国会答弁がいかに愚かな発言であったかについて、現実主義的アプローチから批判しておきたいからである。
日本のマスメディアは低能で不勉強だから、まったく現実をみていない。その結果、衆院選においても、何が最大の論点かさえ明示しえない。バカでマヌケでアホばかりである結果、日本の大多数は戦争へと転げ落ちつつある。
私自身、ラティニナのように、現実主義的な見方を少しでも多くの者に示す役割を果たそうと思う。



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