無知蒙昧な中日・東京新聞社説、少しだけまともなThe Timesの社説:いずれも「現実」を透徹した目で見極める努力に欠ける
2026年10月20日朝、二つの社説を読む機会があった。一つは、中日新聞と東京新聞の社説であり、もう一つはThe Timesの社説だ。前者はあまりにも無知蒙昧であり、こんな社説を書く人物の低能さにあきれるばかりである。後者は、前者よりもずっとまともだが、まだまだ現実を知らない。いずれにしても、この二つの社説について比較しながら、ウクライナ戦争をめぐる「現実」について説明したい。なお、詳しい考察は24日と25日に公表される予定の「知られざる地政学」連載(165)「政治家やマスコミの「偽善」を一刀両断にする:ウクライナ戦争をめぐる最近の出来事の検証」において行っている(といっても、すでに原稿は出稿済みであり、10月19日時点までの考察だ)。世界中を見回しても、これほど詳細な分析はないと自負するものなので、関心ある読者は必読である。
中日・東京新聞の社説
10月20日付の中日・東京新聞の社説「対ロ制裁の緩和 国際信義に反する暴挙」は、日本のオールドメディアの無知蒙昧ぶりを明確に示している。まったく「現実」を知らないまま、戯言をのべているにすぎない。以下に、わけのわからない記述を紹介しよう。
(1)「自国が科した経済制裁を一方的に緩和することは侵略国の戦費調達を助けることにほかならない。国際信義に反する暴挙と言わざるを得ない。」
連載(165)に詳しく書いておいたが、欧州諸国はいま現在も、ロシア産の液化天然ガス(LNG)を大量に輸入し、ロシア側に大金を支払い、その一部がロシア政府の税収となり、戦費調達を助けている。この事実と、今回の措置との整合性をこの社説は無視している。日本もまた例外的にロシア産LNGを輸入しているし、米国はロシア産核物質を輸入しつづけている。専門家であればだれでも知っている事実を無視して、いい加減な論理を振りかざすのはいかがなものか。はっきり言って、軽蔑に値する。
(2)「自身の都合で国際協調によるロシア包囲網を破る振る舞いは、すでに失墜した米国の威信と指導力をさらにおとしめ侵略行為を勢いづかせるだけだ。」
おいおい。戦争を4年半以上も継続しておきながら、いつまでロシア包囲網をつづけるつもりなのか。戦争が長引けば、それだけ多くの人命が失われる。むしろ、いま真剣に考えるべきことは、いかに戦争を停止し、和平に結びつけるかではないのか。
社説は、「侵略行為」と居丈高に書いているが、2014年2月に起きた米国支援のクーデターは「侵略行為」とどう違うのか説明してみろ。あるいは、いわゆるミンスク合意を意図的に履行しなかったウクライナ政権および、それを看過した欧米諸国の「時間稼ぎ」(そう、メルケルは認めている)に何の責任もないのか。
戦争をはじめた側だけが「悪」という短絡的な思考はいただけない。こんなバカな思考回路では、真珠湾の奇襲をして太平洋戦争をはじめざるをえなかった日本政府が100%「悪」であったことになってしまう。外交は双方の言い分に耳を傾けるところに成り立つのであり、社説のような一方的で偏向した見方はあまりにアホすぎて話にならない。
(3)「ロシアに対する経済制裁は米議会が法律で定めた措置で、米議会はトランプ氏に撤回を強く迫るべきだ。国際社会も自身の選挙のためロシアに融和的姿勢を取り、「法の秩序」を破壊するトランプ政権の暴挙を許してはならない。」
まず、「融和的」という字が間違っている。「宥和的」だろう。いかに、この新聞社が知性に欠けているかがよくわかる。
「ロシアに対する経済制裁は米議会が法律で定めた措置」の具体的中身がまったくわからない。これが、いわゆる「地獄のような制裁法」を意味しているのであれば、トランプはその規定に基づいて制裁免除を決めただけだ。つまり、法律に従って、法律の範囲内で認められた権限を行使しただけだ。それを承知で、いい加減な法律を通過さあせたのは米議会なのだ。そんなことも知らずに、よくもこんないい加減な社説を書けるものだと、逆に関心してしまう。
「「法の秩序」を破壊するトランプ政権の暴挙を許してはならない」というのは、反吐が出るほど言い古された戯言にすぎない。10月9日ころから今日までの「現実」を知れば、トランプ政権が懸命に停戦・和平工作に取り組んでいることがわかるだろう。こうした取り組みを「「法の秩序」を破壊する」と糾弾するのは、簡単だが、少なくとも「現実」を知らないにもかかわらず、よくこんな「嘘」を書けるものだなあ、と思う。まあ、連載(165)を熟読玩味して、出直せと書いておこう。
The Timesの社説
10月19日付のThe Timesの社説「ウクライナはロシアのエネルギー施設への攻撃を一時停止する必要があるかもしれない」は、先の社説よりもずっとまともだ。
まず、最近の状況を説明する以下の記述を読んでほしい。
「トランプ氏が、プーチン大統領と交渉したとする「新たなエネルギー協定」に沿って、キエフに対しロシアのエネルギー拠点へのあらゆる攻撃を停止するよう要求したことは、ロシア国内におけるウクライナのもっとも効果的な攻撃目標の一つを封じ込めることになるだろう。これにより、モスクワは石油輸出でさらに数百万の収益を得ることができ、戦争遂行に不可欠な収入をもたらすことになるだろう。それは良いこととは言えないだろう。しかし、先週、ウクライナによる「スターシールド」の利用が、明らかに意図的かつ壊滅的な影響を及ぼしかねない形で制限されたことで、米国によるキーウへの制約が浮き彫りになった。この措置により、ウクライナが攻撃用および防御用ドローンを操作する能力は著しく損なわれた。マルコ・ルビオ米国務長官は週末、ホワイトハウスが「スターシールド」の速度低下を指示したとの報道を否定しており、同システムは現在、通常通り機能しているようだ。しかし、ゼレンスキー氏は、この動きが、ロシアとの停戦を促進するためにワシントンが好む「受け入れがたい条件」を自分に受け入れさせるための試みの一環であるとの疑念を明らかにしている。」
この記述のすべてについて首肯するわけではない。それでも、まあ、全体状況の説明としては受けいれることができる。重要なのは、こうした全体状況の理解のもとで、社説の最後において、つぎのようにのべている点である。
「侵略との戦いにおいて、妥協が歓迎されることはめったにない。しかし、戦略的な一時停止は、トランプ氏によるキーウへのさらなる敵対行為を防ぐ一助となるかもしれない。それはウクライナの立場にとって不可欠であり、歓迎されるだろう。」
つまり、The Timesの社説はウクライナに対して、「妥協せよ」と迫っているのだ。私は、この見解をその通りであると思う。ゼレンスキーは、ウクライナが侵略を被った無辜の国家であり、侵略国ロシアに対抗し戦いつづけるのが「絶対的正義」であるかのように振る舞っている。しかし、絶対的正義など存在しないし、ウクライナという国家が無辜であるなどと考えるほうがどうかしている。
戦争を停止するには、妥協が必要であり、それを強要する強い力が働いても、その力を非難すべきではない。なぜなら、国家ではなく、国民は4年半も戦争をしつづけたかったわけではないからだ(国家主権を運営しているのはアホな政治家や官僚であり、国民のことなど本当は考えていない)。あるいは、今後さらに何年も戦いつづけたいと思っている国民がいるとすれば、それは過激なナショナリストか、戦争で懐を温めているゼレンスキーのような人物だけだろう。
欧州の政治指導者のアホぶりについては、そのうち、「知られざる地政学」において考察する予定だ。オールドメディアの無知蒙昧についてはすでに何度も書いてきたが、必要があれば、これからも幾度でも指摘しつづけることにしたい。



最近のコメント