「真っ黒なゼレンスキー」を裏づけるNYT報道:「汚職天国」ウクライナの秘密軍事監査で判明した四つの事実 

8月31日付で、「現代ビジネス」の編集者として活動していただいた、中国問題の大家、近藤大介氏が講談社を完全退職したことにともなって、後任を置かないとの編集長の方針から、私は「お払い箱」になってしまった。まあ、それは大した問題ではない。問題は、とくにウクライナ問題など、国際政治・経済にかかわる諸問題について、真っ当な解説・分析が多くの読者の目に触れにくくなってしまったことである。

そこで、当面、私の運営する21世紀龍馬会のサイトやNOTEのサイトを使って、重大事件について論評するしかなくなった。今回は、その第一弾として、9月6日付のNYTの記事2本を取り上げる。きわめて重要な記事だが、おそらくこの記事を詳報する日本のオールドメディアはないだろう。そう、彼らは平然と情報操作を行い、結果として、日本国民を騙しつづけてきたし、いまもそうだからである。

 

NYTの二つの記事

NYTの記事は、「ウクライナ軍の秘密監査で明らかになった四つの事実」「機密扱いの軍事監査により、不適切な管理が横行する軍事調達システムの実態が明らかになった。2024年だけでも、ウクライナは不正や浪費により12億ドルの損失を被った」というものである。二つの記事はともに、2024年と2025年の国家監査局と国防省内部の監査部門による機密扱いの調査報告書をNYTが独自に調査した結果に基づいている。

最初の記事では、ウクライナ軍の軍備調達がいかに腐敗に満ちているかについて、その四つの事実を明示している。

 

第一の事実

第一に、監査官らは、価格が水増しされている事例が繰り返し見受けられたにもかかわらず、何の措置も講じられていなかったことを突き止めた。要するに、海外からの「無尽蔵」とも言えるような巨額の軍事支援を前提にして、武器や弾薬などの軍事品の購入価格をあえて高く設定して、兵器供給企業にキックバックさせるという腐敗事例が何度も繰り返されてきたというのだ。あるいは、不要な仲介業者をあえて介することで、その仲介業者に利益を落とし、その利益の一部を還流させるのだ。

2024年の国家監査局の報告書は、仲介業者として機能し、通常少なくとも3%のマージンを上乗せする武器商人との取引について、ウクライナ政府を厳しく批判した。購入の大部分はこうした仲介業者を通じて行われており、それが価格を押し上げ、関連企業に数千万ドルの利益をもたらしていたからだ。本当は、仲介業者を介さず、直接、武器メーカーなどから購入することもできるのに、あえて仲介業者に儲けさせるという構図になっているのである。

「こうした批判にもかかわらず、2025年初頭に行われた別の監査でも、製造業者から直接より安く武器を入手できる場合でも、武器商人との間で利益率の高い契約が複数締結されていることが再び判明した」、ともNYTはのべている。たとえば、2024年にウクライナが数億ドル相当のロケット弾を購入する必要があった際、国防調達庁はチェコの仲介業者と契約を結んだ。しかし、同じ製品について、製造業者からの直接のオファーを含め、はるかに安価な提案があったにもかかわらずである。

 

チェコの軍事企業との「蜜月」

この事実については、先に紹介した、もう一つの記事が詳述している。2024年、国防調達庁は、数億ドル相当のロケット砲の購入に向けた入札を募集し、3社が応札した。1社はロケット1発あたり約4200ドル相当で供給できると申し出た。別の1社は4600ドルを要求した。3社目は5100ドルと提示した。ロケットはすべて同一のものであり、トルコの同一企業が同一の工場で製造したものであった。唯一の違いは価格だけだった。トルコの製造業者であるアルカ・ディフェンス(Arca Defense)は、工場からの直接販売を提案し、最低価格を提示した。

しかし、監査官らは、契約が最高入札者、すなわちチェコの主要持ち株会社、チェコスロバキア・グループの子会社に決定されたことを突き止めた。政府は直接購入する代わりに、チェコの企業に仲介役として報酬を支払うことを決定したのである。「監査報告書に記載された競合入札を『タイムズ』紙が分析したところ、この決定により、ウクライナのロケット購入費用に約1億3000万ドルが上乗せされたことがわかった」という。

しかも、「このロケット契約は、チェコスロバキア・グループを世界的な防衛産業の雄へと変貌させる一助となった、数多くのウクライナとの取引の一つであった」、とNYTは気になる指摘をしている。同社は今年、株式上場を果たし、33年間にわたり筆頭株主を務めてきたミハル・ストルナドを、フォーブスの億万長者リストに名を連ねる最も裕福な武器製造業者へと押し上げたというのだ。これは史上最大の防衛産業における新規株式公開(IPO)だった。同社は投資家に対し、欧州やその他の地域での戦争による軍事支出の「スーパーサイクル」の恩恵を受けていると説明した。2024年には、同社の売上高の40%以上がウクライナ関連の売り上げによるものだった。

こうした現実にもかかわらず、「ウクライナはチェコスロバキア・グループと再び契約を結ぶことを検討した」、とNYTは書いている。今回は、保有するカラシニコフ小銃を、チェコが設計したNATO規格の小銃モデルに置き換えるためであるという。「現時点では、契約締結の発表はない」というが、ウクライナ政府がまったく反省もないままに、腐敗しきっていることがわかるだろう。

 

第二の事実

「企業は納品を怠ったり、欠陥のある弾薬を供給したりしたにもかかわらず、さらに多くの契約を獲得した」というのが第二の事実だ。「ウクライナ国防省の主要請負業者トップ10のうち、7社は、過去の契約を不履行にしていたり、経営幹部が刑事捜査の対象となっていたりしたにもかかわらず、新たな契約を獲得した」、と最初のNYTの記事はのべている。これでは、契約を履行するインセンティブそのものが失われてしまうだろう。

ほかにも、「ある請負業者は、汚職事件で保釈中であるにもかかわらず、新たな契約を獲得した」とも書かれている。さらに、監査官らの調査によると、ウクライナの武器調達担当者は、過去に契約不履行の履歴がある18社と契約を結んでいた。そのうち6社は、1件の契約も履行できていなかったにもかかわらず、当局はこれら企業と継続的に新規契約を結んでいた、とも記されている。

これが事実であれば、もはや武器調達を法に則って行うこと自体、不可能な状況にあると言えるのではないか。

 

第三の事実

「企業は、納入能力を証明することなく契約を獲得した」という第三の事実も存在する。ウクライナの国防調達庁は、トルコから70ミリの非誘導航空ロケットを納入すると約束した仲介業者と契約を結んだ。しかし、トルコの製造業者は、仲介業者が約束した数量を供給できないとウクライナ軍に警告していた。監査官の調査によると、政府はそれにもかかわらず契約を締結した、という。軍は、試験が行われたという証拠もないまま、これらの兵器を購入した。実戦中、1発のロケットが発射管内で爆発し、ウクライナのMi-8ヘリコプターに甚大な損害を与えたため、国内情報機関による刑事捜査が開始された。

もうこうなると、「めちゃくちゃ」としか言いようがない。

 

第四の事実

「武器メーカー各社は利益の増加を報告する一方で、ウクライナの損失は積み上がっていった」、というのが第四の事実である。すでに、紹介したように、ウクライナ国内の軍事企業だけでなく、海外の軍産複合体、請負業者、仲介業者などはウクライナへの軍事支援の急膨張とともに莫大な利益をあげている。

しかし、「調達プロセスにおける問題により、ウクライナ政府は実質的な損失を被っている」とNYTは指摘している。「監査官の調査によると、2024年のわずか1年間で、ウクライナは不正、浪費、および管理不備により約12億ドルの損失を被ったことが判明した」とまで書いている。

ここでいうウクライナ政府の「実質的な損失」とは、まったく役に立たない弾薬を購入してしまったようなケースである。NYTの二つ目の記事では、ウクライナ中部に位置する爆発物供給業者「パヴログラード化学工場」による不正がその典型として紹介されている。議会が調査を行い、2025年4月、警察は工場長のレオニード・シマンを逮捕した。彼は、数万発の欠陥迫撃砲の検査と交換にかかる費用に相当する、約6800万ドル相当の詐欺容疑で起訴された。

裁判記録によると、裁判所は後に、シマンの会社であるパヴログラード化学工場が、使用不能な迫撃砲弾23万3000発を軍に販売していたと認定した。その多くは信管や火薬推進剤に欠陥があったという。

パヴログラードは国営企業だが、化学エンジニアであるシャイマンは2000年代初頭から同工場の責任者を務めてきた。彼はウクライナの「爆発物の王」として広く知られていた。議会は、同業界に関するある法律に彼の名前を明記し、権威として引用していた。広大な不動産ポートフォリオを所有する彼は、ウクライナの地方の基準からすれば豪勢な生活を送っていた。捜査当局によると、シマンの妻と関連するリヒテンシュタインの銀行口座を通じて、900万ドルが移動していたことが判明する。

あきれ返るのは、彼は工場敷地内で、バッファローの群れに加え、シカやヘラジカを飼育していたことだ。彼は、工場が環境汚染を引き起こしていないことを証明するためだと主張したが、汚職防止活動家たちは、幹部たちがそれらの動物を狩猟できるようにするためだったと指摘した。

さらに、監査官が同社の迫撃砲契約を精査したところ、不審な点が見つかった。パヴログラード社は当初、その注文を履行する能力がないとのべていた。しかしその後、説明もなく生産能力を再表明し、政府は同社に契約を授与したというのである。政府の監査官は、工場が注文を履行できるかどうかをだれかが確認しようとした証拠を一切見つけられなかった。欠陥のある迫撃砲が納入され始めた際、監査官は調達機関が「適切な結論を導き出さなかった」と指摘した。それどころか、同機関はパヴログラード社にさらに多くの仕事を委託し、2025年に軍が使用する122ミリ砲弾のほぼ全量を供給する契約も含まれていた。

NYTの報道が事実であれば、いま現在もウクライナに軍事支援している国の政治指導者は、こんな国に軍事支援を継続する理由を明確に説明すべきだろう。軍事支援だけではない。財政支援している日本のような国の政治指導者も、同じような腐敗によって、支援金が盗まれている可能性が濃厚であることを肝に銘じるべきだ(この問題については、「現代ビジネス」においても、私の連載「知られざる地政学」においても、何度も解説してきた)。

 

ゼレンスキーの関与

NYTの二つの目の記事では、ゼレンスキーが調達システムの改革に失敗しており、「その問題は彼の側近にまで及んでいる」と書かれている。そのうえで、NYTはつぎのように記述している。

「昨年、汚職捜査当局は、安全試験に不合格となった防弾ベストの購入を当局者に働きかけていた彼の元ビジネスパートナーを密かに録音した。捜査当局によると、この男は捜査の最中にウクライナから逃亡したという。ゼレンスキー氏自身は関与が疑われておらず、捜査を支持しているとのべている。」

NYTはずいぶんと遠慮がちに書いている。本当は、もっと率直かつ明確に説明できる。この話を具体的に説明してみよう。このウクライナから逃亡したというは、ティムール・ミンディッチである(詳しくは、「現代ビジネス」に掲載した拙稿「ついに暴かれたウクライナ政界の腐敗「一番真っ黒なのはゼレンスキー」」を参照)

2026年4月29日付の「キーウ・インディペンデント」によると、前述の安全試験に不合格となった防弾ベストの購入を働きかけていたのがミンディッチであり、その相手は当時の国防相、ルステム・ウメロフであった。不良品を製造したのは、無人機(ドローン)や長距離巡行ミサイル、フラミンゴなどの製造で知られる「ファイア・ポイント」だ。つまり、ミンディッチは、ゼレンスキー大統領ときわめて関係深いファイア・ポイントなるの会社の利益のためにロビイ活動を行っていたことになる。

これは、『ウクラインスカ・プラウダ』紙が、ミンディッチと現職および元高官数名との間で交わされたとされる会話の記録を入手し、4月28日にその内容を公開したスクープに基づく報道である。公開された録音には、ミンディッチと、当時国防相で現在はウクライナ国家安全保障・国防会議書記兼米・ウクライナ・ロシア和平交渉におけるウクライナ代表団長を務めるウメロフが、ドローンや防弾チョッキを含む防衛契約、人事異動、そして防衛企業ファイア・ポイントの売却の可能性について話し合っている様子が収められているとされる。

なお、ファイア・ポイントについては、「現代ビジネス」(2025年9月4日付)に掲載した拙稿「腐敗まみれのウクライナ軍事産業:ゼレンスキー周辺は「真っ黒」」に詳しいから、そちらを参考にしてほしい。ファイア・ポイントについては、日本のオールドメディアは何度も「提灯記事」を報じている。秋元千明元NHK解説委員もファイア・ポイントに関するいい加減な「提灯情報」を流している。

 

「真っ黒なゼレンスキー」

「現代ビジネス」に掲載した最後の拙稿は、「現職国会議員も関与した汚職疑惑が再燃…ウクライナで政治腐敗問題が続く深刻背景」というものだった。「真っ黒なゼレンスキー」について再論したものである。

NYTもようやく、本当のゼレンスキーについて書かないわけにはゆかないと判断したのであろう。

民主主義の前提には、できるだけ中立公正な情報の提供がある。まじめに民主主義を守ろうというのであれば、NYTのように、反省し、心を改めるマスメディアが増えてほしいと思う。あるいは、私のような「単独者」の見解を伝達する努力をしてほしいと願っている。

 

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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