NYTの意見広告「即時停戦と無条件交渉」を知れ!:日本のマスメディアの不勉強に「喝」

いま、『新しい地政学の構築』(仮題)の執筆に忙しい。そんななかでも、紹介しなければならない情報があるので、ここに書き留めておく。近く「独立言論フォーラム」に掲載される「ウクライナ戦争の即時停戦を求める声を知らしめよ:広島で進められた核戦争への「下準備」という皮肉」も参考にしてほしい。

ここでは、2023年5月16日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙上に、「世界の平和のために」(「米国は世界の平和のために力を尽くすべき存在である」)と題された全面意見広告が掲載された、という情報を知らせておきたい。ウクライナ戦争という「この衝撃的な暴力に対する解決策は、さらなる死と破壊を保証する武器や戦争の拡大ではない」として、「即時停戦と、資格を奪ったり禁止したりする前提条件なしの交渉」を提唱する共同書簡となっている。これに署名したのは、ドワイト・アイゼンハワー大統領が警告した、広義の軍産複合体の利益を制限することをめざす「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク」のロナルド・レーガンの駐ソ連大使を含む退役軍人や国家安全保障専門家らである。

ネット検索してみると、「虹rainbow」というサイトにこの意見広告が全訳されているから、ぜひとも読んでもらいたい。

 

不勉強すぎる日本のマスメディア

この意見広告は5月16日に公表された。しかし、私がみるところでは、日本のマスメディアは例によって、この話をまったく報道していない。要するに、「即時停戦と交渉」を唱える主張は完全に無視されてしまっている。その結果、日本国民の大多数は世界中に少しずつ広がろうとしている「即時停戦と交渉」という声の存在を知らない。

こんな状況下で民主主義が存在するといえるのだろうか。本当に情けない。

もちろん、マスメディアに勤務する者のなかには、これではいけないと思う者もいるだろう。そうであるならば、君たちも声をあげるべきだろう。会社にバレずに訴える方法もあるはずだ。

 

根深い病根

いまの日本のマスメディアの病根は、ジャニー 喜多川をめぐる性加害報道をみているとよくわかる。東京高等裁判所が彼による「セクハラ行為」を認定し、最高裁判所でも認定が覆らなかった時点で、マスメディアは彼を糾弾すべきであった(詳しくは「なぜ東京高裁は「ジャニーズ性加害」を「事実」と認定できたのか 1999年文春報道の裁判」を参照)。

彼は、児童を相手に、芸能事務所を隠れ蓑にして性加害をつづけてきた。それにもかかわらず、刑事事件を免れ、裁判確定後も性加害をつづけていた。結果的に、マスメディアは彼の性加害を助長してきたといえるだろう。いまテレビに登場するジャニーズ事務所に所属するタレント、元タレントもまた被害者であると同時に、ジャニー 喜多川の性加害を間接的に助長してきた「共犯者」でもある。

こうした構図を放置し、正常化へ向けた報道がいまでもなされていない。ジャニーズ事務所の言い分を垂れ流してみても、問題解決にはつながらないのだ。

このマスメディアの体たらくは。ウクライナ戦争報道に通底している。2014年2月のウクライナ・クーデター(マイダン革命)がアメリカ政府の支援のもとで実施されたという事実に蓋をしたまま、まるでロシアのプーチン大統領がクリミア半島併合するために仕組んだかのような出鱈目な報道もあり、結局、このクーデターさえクーデターと報道しないマスメディアばかりであった。

それは、学者も同じであり、早くから、クーデターであると主張し、米国を厳しく批判していたのは、日本では、私ただ一人である(拙著『ウクライナ・ゲート』[電子版と社会評論社版]を参照)。このクーデターに目を瞑っていたのが小泉悠や廣瀬陽子らであり、こんな連中の言うことばかりがいまでもマスメディアで報道されている。

それは、、ジャニー 喜多川の性加害、すなわち米国支援によるウクライナ・クーデターに目を瞑ってきたマスメディアという点で同じなのだ。

 

性加害を報じないことで、ジャニーズ事務所と利益を分け合ったマスメディア

マスメディアはジャニー 喜多川による性加害を報じないことで、ジャニーズ事務所のタレントをテレビに登場させつづけた。これは、マスメディアとジャニーズ事務所との「共犯関係」を示唆している。その結果、性加害の被害者は増えつづけ、共犯関係による共同利益は膨らみつづけた。

これは、米国がウクライナにおいて過激なナショナリストを支援しつづけ、クリミア奪還を含めた対ロ「復讐」、すなわち武力闘争を準備したこととよく似ている。米国のクーデター支援を隠したことで、親欧米のポロシェンコ政権のもとで、ウクライナへの武力支援をつづけた米国の挑発的動きを隠すことが可能となった。ゼレンスキー政権になっても、過激なナショナリストは米国政府の支援によって守られており、彼らはミンスク合意を履行させないために頻繁に暴力を使った。こうした連中との太いパイプをもつヌーランドを国務省次官に就けることで、バイデン政権はウクライナ政府に東部での挑発行為をけしかけたのである。

こうした米国政府指導者らのやりたい放題が可能となった背後には、2014年2月のクーデターに目を瞑ったという決定的な間違いがあったのだ。それは、ジャニー 喜多川への裁判所によるセクハラ認定を無視したのと同じ構図となっている。

 

私もマスメディアの一員であった時期がある。その経験でいえば、巨悪に立ち向かうのがジャーナリストの本分であったと心得ている。少なくとも、私自身は自分の気づいた範囲内でそうした報道をしてきたつもりだ。だからこそ、『噂の真相』の記者からも取材され、記事になったこともある。これは、反権力のジャーナリストであった証拠ともいえる。

だが、いまのジャーナリズムはもう死んでいる。

別の方法で、反権力のためのネットワークづくりが必要であると考えている。ただ、いまは本の執筆に専念するしかない。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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