財政破綻という時限爆弾のカウントダウン

財政破綻という時限爆弾のカウントダウン

 

「令和」なる時代を迎えて、あまりに能天気なテレビ番組を見るにつけて、この国の人々は本当にどこかおかしいのではないかと「21世紀龍馬」は嘆いているような気がします。そこで、冷や水を浴びせるべく、私が2017年から2018年にしたためた『ニッポン不全』という拙稿のなかから、「財政破綻という時限爆弾のカウントダウン」という部分をここに紹介してみたいと思います。事態は深刻であり、2019年中に財政破綻が起きる可能性が70%はあると予測しています。

 

***********************************

政治家、官僚、ビジネス、マスメディアなどの機能不全はやがて必ず破綻を招くでしょう。具体的には、日本国債の元本や利息の支払いが難しくなるでしょう。

2015年10月9日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会(財政制度分科会)において「我が国の財政に関する長期推計(改訂版)」が配布されました。改訂版とされたのは、2014年に欧州連合(EU)の手法に準拠した形で財政収支改善幅を公表したものを直近の税収などを更新して改訂したものだからです。それによると、特別な財政改革も行わず現行の制度・施策を前提とした場合、一般政府の債務残高対国内総生産(GDP)比は、2030年代には300%、2050年代には500%と上昇し続け、財政は破綻します。一方、名目経済成長率が2024年度以降1.6%まで低下するシナリオでは、2020年度以降に対GDP比で11.12%の財政収支改善を毎年度継続すれば、長期的に政府債務残高対GDP比を上昇しないように抑えられるとしました。

2015年7月22日の経済財政諮問会議に提出された「中長期の経済財政に関する試算」によると、「ベースラインケース」と呼ばれる経済が足元の潜在成長率並みで将来も推移するとした場合、経済成長率は実質1%弱、名目1%半ば程度となり、公債費等の残高は2020年度にGDP比199.8%に達すると見込まれていました。金額で1097兆7000億円です。

2015年当時の週刊誌『週刊文春』(12月24日号)で、橘玲は「3年前は経済官庁のなかで内密に議論されていたことがいまや公の場で論じられるようになり、そのうえ「タイムリミット」は五年しかないのだ」と指摘しています。事態の深刻さは一部では、よく認識されていたことになります。国の借金を減らすには、歳入を増やし歳出を減らすしかないのに、国債の増発によって借金を重ねて問題を先延ばしにする無責任な政策が長年にわたってつづけられてきたのです。それを助けてきたのが日本銀行であり、国債を流通市場から買い入れることでなんとか国家財政を裏で支えてきたわけです。

もちろん、政治家が事態の深刻さを理解して抜本的な改革の旗振り役を果たさない以上、財務省は目立たぬ形で国民のコンセンサスを得るために地道な努力を重ねてきました。消費税の引き上げはもちろんですが、相続税を強化して資産課税増を増やすこともしてきました。厚生労働省に働きかけて、2004年の段階で、企業年金が満期償還まで保有すると決めた国債について、時価評価を免除して簿価で評価できるルールを導入することにしてもらいました。その後も時価から簿価へ評価方法を変えることで、国債の流通市場価格に一喜一憂しなくてもすむ機関を少しずつ広げました。2016年4月からは貯金の預入限度額を1000万円から1300万円に引き上げて、ゆうちょ銀行経由で国債購入を増やすという施策も行いました。しかし、こうした弥縫策はかえって綻びを広げてしまったと言えるでしょう。

とくに、2015年1月から相続税改正が施行されたことで、この影響が徐々に広がったことが大きいと思います。「遺産に係る基礎控除額」が大きく減額された結果、控除を受けられる金額が大幅に縮小されたのです。それまで「5000万円+1000万円×法定相続人の数」であったものが、「3000万円+600万円×法定相続人の数」になり、亡くなった人に配偶者と子ども二人がいる場合、8000万円までは相続税がかからなかったのに、改正後は遺産が4800万円を超えた部分に相続税が課税させるようになったのです。

こうして、これまで相続税対策に関心をもたなかったような層にも徐々に税務対策への関心が広がりました。2003年改正法の施行前に相続税対策への関心が高まっていたことから、国税庁は相続税の税務調査そのものの件数を2014事務年度に前年度に比べて14.2%増の3228件に増やし、その75.1%から申告漏れを見つけました。申告漏れ総額は12.7%増の911億円にのぼりました。海外資産についての調査も259件から351件に増やしましたが、違反件数は50件から42件に減少しました。申告漏れ総額は152億円から28億円に激減しました。しかし、これは2013事務年度の総額が前年度比10倍以上に膨らんだ反動にすぎません。着実に海外への「資産フライト」は継続し、財政破綻という時限爆弾の炸裂のカウントダウンは刻一刻と進んだのです。

 

海外要因による影響

2015年12月、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げる決定をくだしました。9年ぶりの利上げとなしました。すでにこれを見越して円安が進んでいましたが、その後米国へ世界中の資金が集中したことが米国の景気上昇を後押ししました。シェールオイルやシェールガスの採掘増加という追い風もあって米国の景気は順調に拡大、それが物価上昇をもたらしたのです。これを抑える目的で利上げが継続され、日米の金利差は拡大方向をたどります。これがさらなる円安を誘う展開となりました。このように、日本だけの都合で財政赤字を克服できるわけではなく、日本は世界経済の変化にたゆたうしかなかったことになります。

円安傾向がつづくことは、外国投資家が日本国債を購入する魅力が薄れることになる。国債購入代金がかさむうえ、売却時の為替差益を望めない。しかも、国債の表面利率はきわめて低水準だから、日本国債を買う理由がありません。それでも日本国債を空売りしておいて、国債価格の暴落後に利益をねらう方法もある。その場合でも、国債価格が実際に暴落すれば円安も急速に進むから、国債先物で得た利益をドルに換える際、多額の為替差損を受けかねません。もちろん、株価や土地などの不動産価格も下落するでしょうから、儲けた円資金でこれらを買いあさり、円相場の落ち着きを待ってそれらを売却しドルに換えて、国債・株式・不動産で儲けたすべての利益を持ち帰るというシナリオも成り立ちます。

問題は空売りをするタイミングでした。日本国債の先物取引としては、中期国債標準物(表面利率3%、償還期間5年)、長期国債標準物(同6%、同10年)、超長期国債標準物(同3%、同20年)がある。いずれも額面100円の架空の債券です。長期国債標準物で言えば、先物価格は160円を超えて推移することはありません。10年間にもらえる利子は60円で、償還分と合わせて160円にしかならないからです。ただ、空売りによる国債暴落はそう簡単にはありえない状況に至ります。日銀が国債を買い支えつづける体制がとられたからです。

2011年ころから、何度となく空売りを仕掛ける動きはありましたが、日銀は先手を打って「包括的な金融緩和策」の一環として、2010年から国債(残存期限が1年以上2年以下の2年債や同1年以上3年以下の5年債、10年債、20年債)などの金融資産を買い入れる「資産買い入れ等基金」を創設し、国債の流通市場からの買い入れを一段と活発化させたのです。この資産買い入れ等基金は2013年4月4日をもって廃止され、長期国債の買い入れは金融市場の調節に使う「通常の国債購入枠」と一本化して日銀のバランスシート上に明示されることになりました。2014年10月に決定された「量的・質的金融緩和」の導入によって、長期国債については、買入れを保有残高の増加額が年間約80兆円 となるように拡大(約30兆円追加)するとともに、平均残存期間を7~10年程度に延長(最大3年程度延長)するまでになります。こうした状況では、気になる外国投資家による国債売却にも対応できました。2015年9月末現在で海外の国債等保有率は全体の9.8%でありましたが、当時、あまりこの割合に懸念をもつ人はいませんでした。

こうした日銀による買い入れ自体は事実上、日銀による国債引き受けを禁止した財政法5条に抵触する可能性がないわけではありません。政府は、国債引き受けはあくまで発行市場において国債を政府から直接、国債を引き受けるという財政ファイナンスを意味するものであり、日銀がやっているのは流通市場において国債を買い上げることで金融調節を行う行為にすぎず、財政法上の禁止規定とは無関係であると主張しています。しかし、こんな方便はいつまでも通じるはずはありません。

 

2020年が危ないという予測

みずほ総合研究所常務執行役員でチーフ・エコノミストの高田創は2015年2月、「日銀はどこまで国債を買えるか、2020年に国債は買占めだ」という、A4版でたった2ページの論考を公表しました。かれによれば、日銀の国債買い入れが年80兆円増加しつづける場合、2015年の国債発行計画ベースがつづくとすると、2020年に残存期間10年以下の国債発行残高に占める日銀の保有割合は80%超となり、8割を日銀が買い占めることになります。「一方、銀行を中心とした金融機関は担保ニーズで一定量を保有する必要があることから、このままの買い入れを行うと2020年近くには日銀はもはや市場から買えなくなる可能性がある」と指摘しています。

国債を引き受けた銀行などはいつでも流通市場でそれを売却できたから、国債も多めに引き受けても多少の利ザヤをのせられる局面で売却できたし、流通市場で国債を買って相場の上方局面で売却して売買益も得られましたが、それが可能であったのは複数の売り手と複数の買い手が競り合うことで市場を形成できたからです。流通市場を形成してきた売り手と買い手のうち、有力な買い手が日銀だけになってしまうと、つまり、流通市場での買い手が事実上、日銀だけという状況になってしまうと、どの銀行も必要量以上に上乗せして国債を保有することに慎重になります。国債を多めに引き受けて、流通市場の相場を見極めながら売却しようとしても、日銀だけが買い手では有利な売却が難しくなる。ましてや流通市場で国債を売買することにも慎重にならざるをえません。売り手が急減し、買い手は日銀くらいしかいない状況下では、流通市場自体が成立しないのです。

買い手である日銀が圧倒的に有利な状況では、売り手がそもそも出てこなくなります。そうなれば、発行市場で国債を引き受ける際、銀行は相当に慎重になるでしょう。余分な国債引き受けをしてその余剰国債を売るにしても、有利な価格で売ることが難しくなるからです。日銀が発行価格より少しだけ高く買ってくれると裏約束するにしても、必要量以上に引き受けて売れなくなるリスクがなくなるわけではありません。こうして、発行市場では、徐々に国債引き受けの需要が減り、国債価格が下落、表面利率の上昇が起こります。これは、政府の国債発行負担を増加させてしまう。発行市場で国債価格が下落すれば、流通市場相場も裁定取引から低下します(金利は上がります)。こうした悪循環がある日、ちょっとした偶発的な出来事をきっかけにパニックをもたらすことになります。ゆえに、高田は、2010年代の後半が「麻酔」をかける限度であり、一刻も早く「手術」に取り掛かるよう促しました。

 

当面の弥縫策

もっとも簡単な弥縫策は、財政法を改正して国債引き受けを認める対策を一刻も早く実現することです。そんなことをすれば、ハイパーインフレになるという人がいるでしょうが、そうならないようにすればいいだけの話です。興味深いのは、フィナンシャル・タイムズの経済論説主幹、マーティン・ウルフが「日本銀行が国際を直接引き受ける、すなわち国債を貨幣化(マネタイズ)することになるでしょう」と予言している点です(『人類の未来』収載)。さらに、つづけてかれはつぎのようにのべています(同pp. 178-179)。

「日本銀行は国債のほとんどを保有することになるでしょうし、現在はどんどんそれらを貨幣化しています。国債を市場に再び売り出す可能性はなく、将来にわたって持ち続けることになるでしょう。日本の銀行は、日銀に多額の準備金を預けることになります。こうやって、政府がどんどん国債を貨幣化して、市場にお金を拠出するわけです。

そうなると、ひどいインフレになるだろうと言われるかもしれません。長期的には十分可能性があります。もし日本の家計が、国債を持っていても利潤をもたらさないから手放そうとすると、日本の政府は支払い不能状態になり、物価が高騰するでしょう。これが20-30年後に起こるかどうかはまったくわかりません。」

ともかく、日銀による国債の直接引き受けまで道をひらくことで、国民を安心させなければ、もはや日本の財政破綻回避はできないところまできていると肝に銘ずるべきなのです。ただし、このやり方は破綻を回避するための延命策でしかありません。やがて強烈なしっぺ返しが訪れるでしょう。無責任が政治家や官僚らによって、このいつ噴火してもおかしくないマグマが溜まりつづけているのです。

***********************************

 

私は、日本経済新聞社に入社したとき、債券担当として国債市場を2年間、ずっとウォッチするのが仕事でした。『日経公社債情報』という専門誌にも頻繁に記事を書いていました。そんな私からみると、いまの日本の国債市場は異常です。もはや国債を積極的に買おうとする投資家は外国投資家くらいしかいません。日本の投資家はいつ国債市場が暴落してもおかしくないために、怖くて手が出せないのです。マイナス金利下での投資はそう簡単ではありません。この結果、財務省は国債発行に難渋しているのです。

2018年夏、すでに破綻の兆候ははっきりと現れました。「米中貿易戦争」といった国際経済環境の悪化で、超低金利の日本国債の人気は薄れ、日銀が7月23日に十年物国債を、買付価格を決めて買うオペレーション(指し値オペ)を行ったがだれも応札しなかったのです。これでは、国債流通市場をテコ入れできない。そこで、日銀は30日、31日、8月1日に買いオペを実施しました。日本経済新聞によれば、30日の「指し値オペ」については金利の急上昇(国債価格の下落)を抑えるために市場の実勢より低い金利(高い価格)で無制限に国債を買い入れると通知されたうえで行われ、市場から1兆6403億円もの応札が集まりました。

31日の買いオペは「国債補完供給オペ」と呼ばれ、日銀による大量の国債買入により流動性に支障が出る懸念があるため、一日だけの限定で日銀が国債を現物方式で貸し出すとかたちで実施されました。さらに、国債価格を人為的に引き上げるねらいがありました。その結果、応札額は1兆4246億円と、この日も1兆円を突破した。国債がないまま日銀に国債を売却(国債の「空売り」)した投資家は日銀から国債を借り受けるといういびつなかたちとなり、その金額は1兆円を超えました。こうして、8月2日、財務省による国債の発行においてなんとか買い手が見つかったのです。めちゃくちゃな買いオペによって品薄状態を出現させた結果です。つまり、もはや日銀が国債の「空売り」という投機に手を貸さなければ国債の発行がままならないほど、国債市場は行き詰まりをみせているのです。

こんな綱渡りをしている以上、国債の流通市場で国債価格が大暴落し、財務省による新規国債発行ができなくなり、いつ財政資金が滞っても不思議はなりません。したがって、財政破綻はオリンピック開催前に起きる可能性が十分にあります。

そもそも、日本の株価は高すぎます。日銀が株価を買い支えているからです。日銀による株式投資は、株価指数連動型上場投資信託(ETF)の購入というかたちで行われています。その累計購入額は2018年12月までに23.9兆円に達しました。これが、Dishonest Abeと海外から評されている安倍晋三首相が行わせてきたやり方なのです。

中央銀行が株価を支えるというのは、「禁じ手」ですね。こんなことをすれば、中央銀行自体の収益の変動幅が極端に大きくなり、結果として、中央銀行自体の経営難に陥る可能性が高まります。恣意的に株価を上げれば、それに乗じて外国投資家が儲けるだけであり、そのツケはやがて外国投資家による利食い売りとなって株価大暴落を招き寄せることになるでしょう。

5月、6月に公表される各種経済指標の悪化を受けて、またもや消費税率引き上げを安倍は延期するかもしれません。そのうえで、参議院選を闘い、安定多数を維持するのかもしれません。しかし、そうなれば、Dishonest Abeの化けの皮は彼の政権時に確実にさらけ出されることになるのではないか。そう思われます。嘘に嘘を重ねるやり方はドナルド・トランプと同じですが、日本のマスメディアは米国に比べるとお粗末そのものです。こんなDishonest Abeのインチキ政治を糾弾できずにいます。

少しだけマスメディアの事情を慮ると、もはやこうした現実を知らせることができないほどに事態は切迫しているのかもしれません。Dishonest Abeの嘘を暴けば、日本自体が沈没しかねないところまで追いつめられているのかもしれないのです。そんな状況にしたのがまさに嘘で固めた安倍晋三という希代の詐欺師なのですよ。

 

「実ニ大馬鹿ものなり」

Dishonest Abeは皇室を政治利用しています。まさに、Dishonestだからこそ、やりたい放題なのです。Dishonest Abeに踊らされている多くの国民をみると、「21世紀龍馬」なら憤りを感じるべきなのではないでしょうか。

坂本龍馬の生誕地から100メートルほどのところに、私はもう20年近く住んでいます。そのためか、わたしは多少なりとも龍馬について知るようになりました。その結果、最近になってようやく龍馬の生き様が21世紀を生きる若者へのヒントになることに気づいたのです。

龍馬の時代、彼は日本人であるよりも前に土佐人でした。土佐藩に生まれ、土佐弁を話しました。龍馬は姉乙女宛の手紙のなかで、「じつにおくにのよふな所(土佐)ニて、何の志ざしもなき所ニぐずぐずして日を送らハ、実ニ大馬鹿ものなり」と書いています。まさに、土佐がかれにとっての「おくに」なのでした。ただその一方で、龍馬には、「日本を今一度せんたくいたし申候」という「志」があったことも知られています。龍馬は自分が土佐人であると同時に、日本人でもあることに気づいていたことになります。

龍馬が特別な存在なのは、この認識を信じて土佐藩を脱藩し、あえて「お尋ね者」となったことによく現われています。当時、脱藩者は自藩から犯罪者として追及されるだけでなく、政治犯として諸藩からも捕縛の対象となりえました。その一方で、家族や親族に迷惑をかけないために「縁を切る」という儀礼も必要だった。こうしないと、土佐に残された家族も犯罪に問われかねないからです。これは、土佐という「くに」を捨て、日本という「新国家」に勝手に籍を移したようなものでした。

土佐藩にあっては、彼は土佐人でした。しかし、土佐人という意識よりも、郷士という、虐げられた下層武士階層にある者という意識が強かったのではないでしょうか。日本人を意識するとき、そこには、武士も町人もない、国民という意識が宿ります。つまり、土佐人を疑うことで、別の位層が見えてくることになります。

この龍馬の経験は、いまの私たちにも大いに参考になります。今度は、日本という国家を疑い、さらに、日本人ないし日本国民であるということをまで疑うことで、そのうえに、「地球」や「地球市民」を想定することさえできます。こう考えれば、国家がちっぽけなものに思えてくるのではないでしょうか。

 

21世紀龍馬会」の誕生

2017年4月、「21世紀龍馬会」が創設されました。19世紀を駆け抜けた龍馬の生き方のインプリケーションをくみとって21世紀に暮らす若者の生き方のヒントにしようという会です。その代表者が私です。龍馬の生き方を現代にいかすことができれば、本人にとってもその周辺の人々にとってもいいことがあるのではないかという期待に基づいています。

当会では、第一回として、「21世紀の龍馬像」というタイトルで、私が講義を行いました。もちろん、わずか90分ほどの講義だから、大した話はできませんでした。それでも、5月、6月、7月と合計4回の講義をしました。2017年11月には、「21世紀の龍馬像」というタイトルを用いて、放送大学高知学習センターで8時間ほどの授業を行いました。少しずつでもかもいませんから、さまざまに機能不全が染み込みつつある日本を洗濯し、より多くの人々がもっと豊かな人生を歩めるようにしたいと考えています。

 

短い生涯からどう学ぶか

龍馬は1835年11月15日(旧暦)に生まれ、1967年の同日に死亡した。わずか32年間の生涯でした。しかし、この短い人生がわたしたちに多くの生き方の極意を教えてくれています。その極意を、21世紀を生きる若者が理解し実践すれば、ほんの少しかもしれないが、龍馬に近づけるのではないでしょうか。そして、それは各自の人生を豊かにすることにつながるのではないでしょうか。

還暦を過ぎたわたしはすでに多くの人々に出会ってきました。とくに、新聞記者を20年近くしていましたから、おそらく数千人に接してきたでしょう。国際通貨基金のトップだったミシェル・カムドシュ専務理事やルーマニア大統領だったイオン・イリエスクとの単独会見を行ったり、日本の大企業のトップ、政治家、官僚などにも頻繁に会ったりしたものです。

そこで痛切に感じたのは、人の話を聴かない人がきわめて多いということです。その結果、わたしの質問を無視して、たった一つの質問に20分も30分も答える者がいたほどです。とくに、ひどかったのはあえて名前は出しませんが、某小説家と関係深い自民党や民主党を渡り歩いた大臣経験者でした。逆に、ワンマン社長として名高い宮崎輝旭化成工業社長・会長はわたしの発言を目の前でメモするような人物でした。

おそらく龍馬は素直に他人の話に耳を傾けることのできる人物であったと推測されます。勝海舟を殺そうと思いつつ、かれの話を聴き、かれに弟子入りしたという逸話は龍馬の「学ぶ姿勢」の神髄を示すものでしょう(もっとも、これが本当の話かどうかは疑わしいと思いますが)。21世紀を生きる若者はこの龍馬の姿勢に学ぶところからはじめてほしいと思います。

(Visited 395 times, 1 visits today)

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

このページの先頭へ