なぜ清王朝への批判が中国共産党を怖がらせるのか

今週、もっとも面白おかしかった記事と言えば、The Economistの「なぜ清王朝への批判が中国共産党を怖がらせるのか」というものだ。ぜひ、読んでみてほしい。

 

広まる反清思想

まず、「現在、ますます広まりつつある反清思想」という話が紹介されている。清王朝とその悪行に関する議論は、かねてよりオンライン掲示板などで取り上げられてきたが、これらは「1644年の歴史観」(“1644 historical view”)と総称されているという。これは、清が明を打倒した年を指す(明の統治者は、中国で支配的な民族である漢族であったのに対し、清は北方の少数民族である満州族であった)。

中国の公式な歴史観では、1840年の第一次アヘン戦争を皮切りに、1949年の毛沢東の権力掌握によってようやく終結した、外国による侵略による「百年の屈辱」の時代があったとされる、とThe Economistは説明している。だが、「1644年歴史観」は、支配が始まったのは清の時代からだと主張している。この説によれば、清は反漢的な侵入者であり、さらに悪いことに、外国勢力を撃退する能力に欠けていたと批判する。

中国人を狭くとらえれば、漢民族となり、満州族は「夷敵」とみなされても仕方ない。

 

領土拡大に奔走した清

ところが、こんな清であっても、チベット、新疆、内モンゴル、台湾など、現代中国が領有権を主張する地域は、明王朝ではなく清王朝によって中国帝国に編入されたものである。そう考えると、清王朝を唾棄するのは、いまの中国共産党の領土政策に唾するようなものにみえてくる。

The Economistの記事によれば、「満州人に対する不満は、党が掲げる民族和合の理想にも反する」という。現代中国のアイデンティティを形成する要素の多くは漢民族の伝統に由来しているものの、中国人口の90%を占めるこの単一の民族集団による支配について公然と語るのは不適切であるからだ。党は「漢民族至上主義」を快く思っておらず、それが非漢民族グループからのさらなる反感につながる可能性があるとの見方を、当然のこととして抱いている。

 

人間の感情

ところが、そう簡単に人間の感情を操ることはできない。そんな話が近日公開予定の映画『The Belief』を題材にして紹介されている。この映画は、1683年の海軍遠征(清による台湾併合を可能にした)を称える愛国的な作品として制作された。しかし、ネット上では、征服された側(台湾に拠点を置いていた明王朝の漢人忠臣たち)に対して、彼らを鎮圧するために派遣された清の兵士たちよりも同情的な声が多数上がっている、というのだ。

さらに、「実際、1644年という視点は決して目新しいものではない」として、The Economistは、「その先駆けとなった人物の一人が、近代中国の父として称えられる孫文である」と書いている。20世紀初頭、清王朝打倒の主導的な役割を果たした彼は、満州人を「部外者」として激しく非難していたという。

やはり、よく勉強してみると、いろいろなところに綻びを生じていることがよくわかる。

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塩原 俊彦

(21世紀龍馬会代表)

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